飛んできたスパナ。あの本田宗一郎が貫き続けた「現場・現物・現実主義」

BANGKOK - December 9, 2018 : honda accord 2019 on display at Bangkok thailand international motor expo 2018(Motor expo) in Bangkok, Thailand
 

本田さんは、いつもしつこいくらいに「いいモノをつくるにはいいものを見ろ」とおっしゃっていました。ある時、こんな苦い経験をしたことがあるんです。「アコード」の4ドア版をつくっていた時のことでした。

僕らのデザインチームは、4ドアを従来の3ドアの延長線上に考えて開発を進めていた。ところが本田さんは「4ドアを買うお客さんの層は、3ドアとは全然違うぞ」と言って憚(はばか)らない。ボディは四角く、メッキを付け、大きくて(価格が)高そうに見えるようにしろと言われるのです。

僕は内心、そんな高級車はよその会社に任せればいいと考えていました。ほんの気持ち程度の対応しか見せない僕らに、本田さんは「君たちはお客さんの気持ちが全然分っていない。自分の立場でしかものを見ていない」と日ごとに怒りを募らせてきます。

毎日、よく似たやり取りが続き、我慢の限界を感じた僕は「私にはこれ以上できません。そんな高級な生活はしていませんから」と口にしていました。本田さんはそれを聞くなり「バカヤロー!」と声を荒げ、「じゃあ聞くが、信長や秀吉の鎧兜(よろいかぶと)や陣羽織は一体誰がつくったんだ?」と言われたんです。

大名の鎧兜をつくったのは、地位も名もない一介の職人。等身大の商品しかつくれないのであれば、世の中に高級品など存在しなくなる。

自分の「想い」を高くすればできる。心底その人の気持ちになればできるんだ、と(本田さんは)教えてくださったんです。

※ 本記事は月刊『致知』2007年8月号 特集「人は教えによりて人となる」より一部を抜粋・編集したものです

image by: Kridsada Krataipet / Shutterstock.com

致知出版社この著者の記事一覧

京セラ・稲盛和夫氏、サッカー日本代表・岡田武史氏など、人間力を高める月刊誌『致知(ちち)』に登場した各界一流人の名言や仕事術など、あなたの「人間力アップ」に役立つ情報を配信中。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 致知出版社の「人間力メルマガ」 』

【著者】 致知出版社 【発行周期】 日刊

print
いま読まれてます

  • 飛んできたスパナ。あの本田宗一郎が貫き続けた「現場・現物・現実主義」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け