168人への取材で判明。もはや「AI監獄」と化した新疆ウイグル自治区の実態

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日本の大手メディアがほとんど踏み込むことのない新疆ウイグル自治区の問題。アメリカ人ジャーナリストのジェフリー・ケイン氏が168人ものウイグル人に取材し暴いた現在の彼の地の状況は、驚くべきものでした。今回の無料メルマガ『1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』』では、中国共産党がこの数年で進めてきた最先端AIを駆使した統制方法を紹介。取得したデータを利用し、強制収容所内で起こっているかもしれない恐ろしい疑惑についても言及しています。

【一日一冊】AI監獄ウイグル

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AI監獄ウイグル
ジェフリー・ケイン 著 濱野大道 訳/新潮社

第二次大戦中、ドイツのナチス政権は、占領地のユダヤ人に黄色いダビデの星のマークを着用することを義務づけていました。ユダヤ人は最終的には強制収容所で虐殺されることになりました。

この本ではアメリカ人ジャーナリストである著者が、168人のウイグル人に取材した結果、今、ウイグルではスカイネット(天網)と言われる個人認識・評価システムでウイグル人の信用度を評価していることがわかります。ウイグル人は中国共産党から、デジタル上でマークを付けられているのです。

2013年頃には、ウイグル族か、失業中か、海外に住む家族がいるかといった情報をもとに、ウイグル人の信用度が評価され、「信用できない」と判定された場合、ガソリンを購入できない程度でした。

ところが最近では、監視カメラ、裁判記録、内通者の密告データがAIによって処理され、「予測的取締りプログラム」に基づき「信用できない」と判定されると、強制収容所に送られるようになったというのです。

大学院生の証言では、2016年に警察署に呼び出され、DNA採取、採血されただけでなく、彼女の声でスカイネット(天網)は彼女を認識し、「社会ランキング:信用できない」という表示が出て、勾留センターで暴行を受けたという。

認識ソフトウエアによって声が識別された。スカイネットは彼女を見つけた(p53)

新疆ウイグル自治区では、2016年から学校、警察署、スポーツセンターが勾留施設へと改修され、全住民の最大10%が身柄を拘束されているという。さらにウイグルでは近所の10件の家を監視するよう任命された地域自警団の役員が、「不規則なこと」がないかチェックすることまでしているのです。

2017年には、100万人の共産党幹部をウイグル人の家庭に配置する「家族になる運動」(結対認親)がスタートし、ウイグル人の家庭に漢人が寝食をともにしながら住民を監視しはじめたという。もちろん、拒否すれば、その家族は強制収容所送りになるのです。

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