激安スーパー「ロピア」も「業務スーパー」も。焼肉店への参入で見せる戦略と本気

 

高価格帯から中価格帯へ進出

さて、ロピアの焼き肉では高価格帯から中価格帯に進んでいることが特徴だ。

この最新の事例は、ロピアの外食事業子会社のeatopiaが2022年8月横浜・センター南駅と直結する港北TOKYU S.C.5階に「焼肉 ギュウトピア」(52坪70席)をオープンした。

横浜市内・センター南駅に直結したロピアが入居するビルの5階に中価格帯の焼き肉店を出店

横浜市内・センター南駅に直結したロピアが入居するビルの5階に中価格帯の焼き肉店を出店

土日祝日にはファミリー客中心のウエーティングが続くがオペレーションがスムーズでお客が回転する。昨年8月オープンで客単価5,000円、月商1,500万円を売り上げている。

「ギュウトピア」は客単価5,000円で、センター南駅店周辺のファミリーの利用が多い

「ギュウトピア」は客単価5,000円で、センター南駅店周辺のファミリーの利用が多い

ロピアのことは冒頭で述べたとおり今日奇跡の急成長を遂げている注目の企業。一番の特徴は商品が良質で廉価であること。店名の由来は「ロープライスユートピア」。

同社では2019年1月外食事業会社のeatopiaを立ち上げた。同社の代表取締役社長に就任したのは山科博昭氏(37)。山科氏は慶應義塾大学のテニスサークルでロピア社長の高木氏の後輩にあたる。日本IBM、そして外資系金融機関へと進むが、高木氏から「実業の世界で一緒に会社を成長させる夢を見てみないか」と誘いを受けた。

ロピアグループでの山科氏の最初の仕事は、ロピアがM&Aしたばかりの惣菜・食品メーカー利恵産業の代表。当初営業は苦戦したが、ロピアの理念どおりに商品化したチーズケーキが大ヒット。そして、山科氏は次のステージとして高木氏から外食事業分野の開拓を要請された。2018年の秋であった。

そのテーマは二つ。まず、ミシュランの星付きのブランドを育てて海外に輸出すること。もう一つは、このブランドの調味料や食品を開発してロピア限定で販売すること。その第一弾として2019年11月焼肉店の「銀座山科」(客単価1万9,000円)をオープン。2020年8月に一つ星の熟成肉料理店「小石川中勢以」をM&A。そして2022年4月銀座4丁目交差点のビル11階に焼き肉・鉄板料理の「本店山科」(客単価3万2,000円)をプレオープンし、8月よりグランドオープンしている。

ロピアの外食事業で最初に手掛けたことは客単価3万円アッパーの鉄板焼き店

ロピアの外食事業で最初に手掛けたことは客単価3万円アッパーの鉄板焼き店

「道場六三郎」ブランドで市場開拓

山科氏は高級店を展開する中で客単価5,000円という中価格帯焼き肉店の構想を抱いていた。しかしながら、当初のテーマは前述したとおりの「世界に知られる高級店ブランド」。山科氏の構想について、高木氏から「当初のテーマが軌道に乗ってから」と言われていた。すると、ロピアの神奈川エリアの旗艦店が入居する港北TOKYU S.C.5階に物件が出た。すかさず高木氏に「客単価5,000円の焼き肉店」のオープンを申し出た。

また、ロピアでは2021年12月“和の鉄人”道場六三郎氏の会社、道場六三郎事務所をM&A。ロピア店舗で道場ブランドの惣菜や調味料を販売。「ギュウトピア」の中にも「『和の鉄人』道場六三郎のトリュフの焼きすき」をラインアップして人気メニューとなっている。

また「道場六三郎」ブランドの展開では今年2月23日、ロピア松戸店の中に「懐石みちば」(20席)をオープン。同店のコンセプトは「和の鉄人『道場六三郎』がつくり出す至高の味を“もっと身近で、もっと気軽に”楽しめる」ということ。価格は同ブランドの旗艦店「銀座ろくさん亭」の50~70%となるランチ3,000円(税別、以下同)、ディナー9,900円を設定している。

今年2月にオープンした「懐石みちば」のランチ3,000円(税抜)の一例

今年2月にオープンした「懐石みちば」のランチ3,000円(税抜)の一例

ちなみに道場六三郎事務所の代表は伊藤永氏。伊藤氏はかつてアールランドサービスで「かつや」をはじめとした和食のファストフードを700店舗に引き上げた人物である。これからロピア外食グループの中で、低価格帯の業態展開の想定されることから、外食事業のポートフォリオをいち早く豊かにしていくことが想定される。

急成長スーパーマーケットが外食市場に本格参戦してきて、外食プロパーの企業がどのような要素を持って戦っていくいくのかが大いに注目される。

image by: 千葉哲幸
協力:神戸物産 , ロピア

千葉哲幸

プロフィール:千葉哲幸(ちば・てつゆき)フードサービスジャーナリスト。『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(商業界、当時)両方の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しい。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

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