福祉領域で働く人たちに「社会学」と「教育学」の素地が必要なワケ

 

大学や専門学校の講義は、自分がなりたいものにどう役立つのかわからないと、聴いているのが辛く退屈になるものです。社会福祉士を志す人たちの中には、「社会学」の講義をそう捉えている人がいるとの認識のもと、この4月から教鞭を取ることを決めたのは、生きづらさを抱えた人たちの支援に取り組む引地達也さん。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』では、「福祉に携わる人が社会学の視点を持つことは仕事を充実させる」との確信をいかにして伝えていくか、難しさを感じながら模索する過程を綴っています。

社会福祉士に「社会」を見る目、仕事を楽しくする取組

今年度から埼玉福祉保育医療製菓調理専門学校(さいたま市大宮区)の社会福祉士養成講座で「社会理論と社会システム」を講義することになった。

社会福祉士の国家試験の合格を目標に、実務経験や4年制大学の卒業等が入学資格となっているため、学生は明確に福祉分野で働くためのスキルアップのためにその門を叩いている。

社会福祉士の受験資格を得るという目的の中で、私が担当する科目は社会学の基礎などを学ぶもので、この学校に限らず、社会福祉士を目指す方にとっては退屈ですこぶる評判が悪い科目のようだ。

しかし、今回私が引き受けたのは、この科目、社会学を学ぶことで仕事の幅が広がり、支援が面白い、人と関わるのが楽しい、と思える素地が作られると思うからである。

確実に福祉領域の中心的な役割を果たす学生のみなさんに、その仕事の質を上げて楽しい仕事をするための、よい時間になればと深く考えて、講義を工夫したい。

この専門学校とは2018年度から3年に渡り、障がい者のライフステージに関わる仕事に向けて、新しい学びのプログラムを構築する文部科学省の実践研究を共同で行った経緯がある。その時から、社会福祉士をはじめとする福祉領域で働く人たちが、支援が必要な人への幅の広い、未来を意識した、ライフステージに関われる支援をするためには福祉学だけではなく、社会学と教育学の素地が必要と説いてきた。

この取組は途中、コロナ禍により集合型の講義が中断され、オンラインでの開催で対応し、教材そのものは開発したものの、その後の活用・展開のエネルギーは残っていなかった。そんな中で同校での「社会学」を講じることは個人の思いからも、「福祉の中の社会学」の再構築の意味もある。

そして何よりも私自身が支援の中で社会学の視点を持つことで、仕事が充実するとの確信もある。これからは、その確信を、一緒に学び合いにしていくのが大きな喜びだ。

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