福祉領域で働く人たちに「社会学」と「教育学」の素地が必要なワケ

 

この社会学。テキストは「社会理論と社会システム」と題され、なおさらに取っつきにくい印象がある。初回はオリエンテーションとして、社会学の創始者であるフランスのコントを源流としながら、イギリスのスペンサーやフランのデュルケーム、ドイツのマックス・ウェーバーら近代社会学の基本の話をしたが、それらの名前たちは実社会とは遠すぎて、名前を出したとたんに学生たちが遠のいていく印象だ。

近代国家の礎を気づいた板垣退助や森有礼らがスペンサーからも学んだことなどの話を差し込むと少しは関心を寄せてくれるかもしれないが、社会福祉士の試験はそこまでは求めないらしい。

もちろん、学生らは社会福祉士になるため、そして講義する私への作法として一生懸命聞いてくれるのだが、それが自分事にならないと心にすっと入ってはこないだろう。各理論を支援に結びつけるストーリーづくりが今後の鍵に握りそうである。

社会学は社会問題の学びであり、人と人の関係の学問ともいえる。学生に関心のある問題を聞いたところ、「人口問題」との返答。これはさまざま領域から語られる問題であるが、社会を結成する単位の人の数の問題は大きい。人口減の課題は誰もが危機意識を持ちながら、政府が異次元の少子化対策をするまでになっている。

例えば、恵泉女学園大学の学生募集の停止は少子化の結果でもある。現在ある大学のうち学生数を確保できる割合は当然ながら人がいないことで淘汰される。

しかし地域での高等教育機関は残さなければいけないから、私立大学を公立化する動きもある。その中で恵泉女学園大学のようなキリスト教教育をする学校が公立化できない実態もある。ここに日本社会特有の政教分離の考えや法律が介在してくる。

人口減少というマクロな社会と宗教に関する法律、そして東京郊外にあるという事実などマクロとミクロの社会問題が募集停止という事実に結びついている。

1つの問題から論じ合いながら社会理論に結び付けて、社会学を自分のものにして、支援活動に役立ててもらいたいと思う。そんな講義を作りたく、これから工夫を重ねる日々が始まる。

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