すでにウクライナ軍は戦死が増えて兵力が減り、ろくに戦えない。これから戦争が長引いても実際の戦闘は大したものでなく、演出された政治・建前・プロパガンダ的な「戦争状態」だけが続く。
ロシアは軍事的に緒戦から優勢であり、戦争状態が長引くほど、非米側の金資源本位制の確立によってロシア経済はむしろ好転する。
● Russia completely abandon dollar, euro in energy trade – deputy PM
習近平は、和平仲裁の主導役を買って出ることで、プーチンと組んでウクライナ和平をいつどう進めるか、いつまで止めるかという戦争終結の時期を決める権限を握った。中露は、好きなだけ時間を作って非米側の結束と金資源本位制を強化できる。
そのうち米国が金融崩壊していく。米国の銀行危機はいずれ必ず再発する。欧州が米覇権を見限り、ウクライナ和平を望む姿勢を強める。それを見届けたら、習近平がウクライナ和平の仲裁に本腰をいれる。そのころまでに世界は多極型への転換を完了する。そんなシナリオだろうと思われる。
米政府は、半導体製造など戦略的に重要な産業の面でも、中国との敵対を強めている。これまでは米国側が半導体製造の高度技術を持ち、それを中国に投資して儲け、中国は米国側から「借りた」高度技術を使って実際の製造を担当してきた。
中国は実のところ米国側から借りた技術を習得し、すでに自分のものにしている。それでもこれまでは、借りた技術の使用料みたいな感じで米国側からの投資を儲けさせてきた。ところが今は、米国が米中分離策を進めてもう中国に技術を出さず、中国に投資して儲けることもやめていく。
これは一見、米国側が技術を借さずに中国を困らせる中国敵視策に見える。だが実はすでに中国は高度技術を自分のものにしており、米国側に利益をとられなくなる分、中国の儲けが増える。
● Biden Preparing Executive Order to Limit US Investments in China
● Beijing has expressed ‘firm opposition’ to plans to restrict normal exchanges between Chinese and Dutch companies
米中分離は中国にとって好都合であり、米国側を損させる。それを知りながら、米国はハイテク面などで中国との経済断絶を進めている。
イエレン財務長官は先日「米国にとって大事なのは経済利得よりも安全保障だ。安保的な中国の脅威をなくせるなら、中国との経済関係を切ることで米国が損をしてもかまわない」という主旨の発言をした。
米国が中国との経済関係を切っても、中国の脅威は減らない。逆に増える。中国はすでに高度な半導体技術をおおむね習得しており、米国から関係を切られても困らない。
● Biden is willing to damage US economy to counter China – Yellen
むしろ中国は、これ幸いと非米側の経済結束を強め、米国側に気兼ねせず世界経済を非米化していくようになる。中国は米国側への報復として、非米側が握る資源類を米国側に出さなくなり、米国側を経済破綻に追い込んでいく。
米中分離は、米国側の脆弱化と、中国の経済的な脅威をむしろ増やす。これもまた隠れ多極主義的である。
● U.S. Cuts Itself Off From Future Chinese Profits
(無料メルマガ『田中宇の国際ニュース解説』2023年4月24日号より一部抜粋・敬称略)
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