なお、65歳からは国民年金から老齢基礎年金の支給が始まるので、それとの併給は何も引かれる事無く受給が可能です。よって遺族厚生年金+老齢厚生年金+老齢基礎年金という受給の仕方が可能という事ですね。
さて、この老齢厚生年金との差額を遺族厚生年金として支払うという仕組みは平成19年4月改正から導入されました。
それまでは老齢厚生年金を選ぶか、遺族厚生年金を選ぶかの完全な選択でした。
老齢厚生年金を貰えるというのは、それまで自分自身が厚生年金に加入して働いた対価として受給できるものですが、今まで働いて築いた厚生年金期間を諦めて、配偶者の死亡から発生した遺族厚生年金を選ぶという事になりますよね。
「どちらかを選択せよ」というものでしたから、遺族年金を選択したらせっかく今まで働いてきた厚生年金期間が何だか無意味な状況でした。
そのため、じゃあまずは自分が働いてきた分の老齢厚生年金は必ず貰うものとしつつ、それよりももし遺族厚生年金が金額多いなら差額を支給しようという形に平成19年4月1日以降の死亡から変化したわけです。
年金総額は平成19年3月31日までのやり方と別に変らないんですけどね。
ただし、老齢は課税対象になりますが、遺族年金は非課税なので税金や社会保険料の負担が増えるような形にはなった印象ですね。
そのように、自分が働いた分の厚生年金はちゃんと貰えるようにしようという要望が平成19年4月改正に繋がったわけです。
しかし、自分が働いた分も反映させれるようにしたのはその前からあって、それが平成6年改正からでした。
遺族厚生年金と老齢厚生年金の貰い方は前述した方法が一般的なのですが、65歳以降の人はもう一つの計算式でも計算します。
それは死亡した配偶者の老齢厚生年金の半分と、自分自身の老齢厚生年金の半分を遺族厚生年金として受給しようという形です。
例えば死亡した夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)は120万円で、妻の老齢厚生年金は80万円だったとします。
そうすると普通に計算すると、夫の老齢厚生年金の4分の3である90万円が遺族厚生年金になりまして、妻の老齢厚生年金80万円との差額である10万円を遺族厚生年金として支給するという事になりますよね。
ですが、その夫の遺族厚生年金を更に3分の2にすると90万円×2÷3=60万円となり、妻の老齢厚生年金80万円を半分(2分の1)の40万円を足したら100万円になります。
この100万円を遺族厚生年金として支払うという計算もやります。
そうすると、先に計算した遺族厚生年金90万円よりも100万円のほうが多いから、この100万円を遺族厚生年金として支給し、妻の老齢厚生年金80万円との差額である20万円を遺族厚生年金として支給する事になります。
なんか…4分の3とか3分の2とか出てきて複雑だなあと感じられたかもしれませんが、最初の夫の老齢厚生年金120万円×4分の3×3分の2=60万円になってますよね。
つまり、死亡した配偶者の老齢厚生年金額の半分と、自分の老齢厚生年金の半分ずつを受給しようというやり方が平成6年改正から加わったわけです。
このように遺族厚生年金を支給する場合は必ず、その2つの計算式を比較して多いほうを支給する事になっています。
ただし、さっきの半分ずつの支給の計算は「夫婦」の場合のみです。
この2つの計算式で有利なほうを支給するわけですが、3分の2+2分の1の計算のほうが有利になるケースは、配偶者の老齢厚生年金(報酬比例部分)の額の2分の1を超えるようになるような場合ですね。
もし夫の生前の老齢厚生年金が120万円だったら、妻の老齢厚生年金が夫の半分である60万円を超えるなら、3分の2+2分の1の計算が有利になってきます。
なお、受給する人が配偶者以外の人(子、父母、孫、祖父母)であれば、3分の2と2分の1とかいう計算はしません。
原則通りの差額支給をするだけです。
というわけで、今回は65歳以降の遺族厚生年金の支払い方について考えてみたいと思います。計算式の変化のタイミングや仕組みの違いに気を付けましょう。
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働いてる最中に年金額が変わり、計算式が変わる