プーチンが転換したウクライナ戦争の戦略目標
迫害と粛清の恐れがありながらロシアに戻ったらしいプリコジン氏。
2万人越えのワグネル戦闘員を受け入れたベラルーシとルカシェンコ大統領の狙い。
イメージ戦略と揶揄されながらも、国内各所に出没して“国民との対話”を行うプーチン大統領の狙い。
ワグネルの乱後、ワグネルの戦闘員を称え、3つの選択肢(ロシア軍に入るか、除隊して故郷に帰るか、それともベラルーシに移ってウクライナ攻撃を行うか)を突き付けたプーチン大統領ですが、実際には3つ目以外のオプションはないことを示し、ウクライナを北から攻める主力部隊に変えてしまうマジック。
姿を消したスロビキン司令官の動向。
いろいろと不可解な状況が今回のワグネルの乱を巡って生まれています。
そして最近、空回りが目立ちだしたウクライナとそのサポーターたちの現状やNATO加盟国間の温度差、NATO加盟国内の混乱の激化と市民生活への負の影響の拡大、自国の政治問題が緊迫化してくる欧米諸国のジレンマ、などウクライナにとっては懸念される状況が多発してきており、ウクライナが反転攻勢に賭けることが出来る残された時間はもうあまりないように思えてなりません。
このところ、プーチン大統領とロシア軍は戦略目標を「ウクライナとゼレンスキー政権への致命的な打撃と親ロシア政権の樹立とロシアへの編入」から「クリミアを死守し、ドネツク州・ルガンスク州・ヘルソン州・ザポリージャ州などの実効支配を固定化することで、決して“負けることがない”状況を作り出すこと」に変更したそうです。
もしそうなのだとしたら、ワグネルの乱とその後の混乱は、もしかしたら“負けない”ためにすべて仕組まれた大芝居なのかもしれません。
今週に入ってまたロシア・ウクライナ双方から、調停グループに連絡が来るようになりました。
これが何を意味するのか。まだ私は意図を読み切れていない気がしますが、この忌々しく、一般市民の日常を奪うだけの戦いが一日も早く終わるきっかけに繋がってほしいと切に願うばかりです(もしそうなら、もちろん精一杯お手伝いします)。
以上、国際情勢の裏側でした。
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