Google日本元社長が暴露する、日本の家電産業が凋落したこれだけの要因

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かつては品質と性能の高さで世界を席巻した日本の家電製品。しかし今やその栄光は見る影もないのが現状です。何がここまでの惨状を招いてしまったのでしょうか。今回のメルマガ『『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~』では、『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』等の著作でも知られる辻野晃一郎さんが、その外的・内的要因を詳しく解説。自らがソニー在籍時に体験した、ウォークマンの牙城をアップルに奪われた経緯についても紹介しています。

メイド・イン・ジャパンの凋落。なぜ日本の家電産業は地に落ちたのか

日本家電産業の苦境が一気に表面化したのは、既にひと昔以上前となる東日本大震災に見舞われた翌年、2012年3月の決算発表時でした。ソニー、パナソニック、シャープなどの家電大手各社が、軒並み一社当たり数千億円に及ぶ巨額の損失を計上して、世間に大きな衝撃を与えたのです。

その時、私は当時頼まれていた講談社現代ビジネスの連載で、以下のようにコメントしました。

これは、決して震災などに起因した一過性の現象ではない。それぞれの企業固有の経営問題であると同時に、日本の家電産業全体が抱える構造的な問題が一気に露呈したものでもある。したがって、国家の産業政策的にみれば、業界大再編を視野に入れたダイナミックな産業革新の発想とアクションが求められてしかるべきなのだ。

半導体産業の話はまた回を改めてするつもりですが、かつて日本が世界に隆盛を誇った半導体産業が壊滅的な状況になった時、日立製作所・三菱電機・NECの半導体部門を再編し、産業革新機構やトヨタなどが資金援助をして、ルネサスエレクトロニクスを誕生させました。

この時、この業界再編についての議論や賛否はさまざまありましたし、誕生後も長く苦戦が続きましたが、結果的に、最先端プロセスの製造はTSMCなどに委託しながらも、今のところ車載半導体や汎用マイコンでは世界にそれなりの存在感を示す立場に踏み止まっていることは、一定の成果として評価されて良いと思います。

インテルやフリースケールなど、外資系半導体メーカーを通じて半導体業界が長い私の親しい友人の一人が、その実績を買われて、ルネサスエレクトロニクスの立上げに経営幹部として参画していました。彼は、内向き体質を打破して海外顧客を増やしたり、海外の中堅半導体メーカーをM&Aしたりと、いろいろ奮闘していましたが、その苦労が実ったと言えます。

同じように、当時、日本の家電各社は、半導体以外の分野についても、企業の枠を超えた大胆な戦略的統廃合を行うべきだったと思いますが、そのような動きにはなりませんでした。結局、シャープは台湾企業ホンハイ(鴻海)の傘下に入り、サンヨー、東芝、NECなどの白物家電事業、テレビ事業、パソコン事業などは、美的集団、ハイアール、ハイセンス、レノボなどの中国企業に売却されてしまいました。これら売却先の台湾企業や中国企業は、もともと日本メーカーの工場の海外移転に伴い、その下請けのような形で関係を作ってきたメーカーでもあり、子に親が食われる形になったのは皮肉なことです。そしてこの現象は、以前に4つのTで整理したTILTにあたるものでもあります。

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日本の家電産業は、自動車産業などと並び、made in Japanを代表する産業分野として大成功を収めながら、その後、なぜ苦境に追い込まれ凋落していったのでしょうか。これは、多くの人たちにとって、ずっとモヤモヤしていることかもしれませんので、ソニーという会社を通じて家電産業に身を置いた立場から、私なりに整理しておきたいと思います。

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