倒産の可能性は?
さてここからは私の見解です。私は会社の再生ばかり20年以上やってきた中で、「突然死」のような事例も少なからず見てきました。
ビッグモーターは非上場会社で、財務内容を公表していません。よって、私が一番知りたい自己資本比率や現預金残高、営業利益などがハッキリわかりません。数字で危険度を判断するのはできそうにありません。
ただ、月次の売上高と経常利益は、このサイトに詳しく書かれていました。
● 「【独自】ビッグモーター、実は大幅減益」AUTOCAR JAPAN
記事にはこう書かれています。
昨年までは40億円前後の単月経常利益が、今年4月に10億を切って7億7,000万円台にまで落ちました。
年商6500億円ということは、12で割ると月商541億円平均になります。去年までは、月商541億円、月の経常利益40億円 ≒ 7.3%の経常利益だったようです。かなり高い利益率ですね。
しかし直近では、月商はハッキリしませんが、仮に400億円に減収していると仮定して、そのうち経常利益が7億7,000万円だとすると、利益率は1.9%になります。かなり低い利益率ですね。
では数字以外の面ではどうでしょうか?
1.行政処分はあるのか?
現時点ですでに、不正車検を実施した複数の店舗が、店舗単位ではありますが、国土交通省から行政処分を受けています(佐賀、熊本、栃木など)。
33店舗の工場で何らかの不正行為が発覚しているので、今後、国土交通省からの行政処分が広がる可能性があります(修理の認証工場、指定工場としての処分)。
また、「古物商」としても、なにしろ保険金の不正請求などをしたわけなので、全店規模で営業停止処分、最悪の場合は取消処分(免許剥奪)のおそれもあるでしょう。
2.民事上の責任を負うことはあるのか?
保険会社から、水増し請求分の返還を求められており、一部は既に支払われているようです。
証拠がハッキリすれば、エンドユーザーから「うちの車に傷つけられた!」など、損害賠償請求が発展するおそれもあるかもしれません。
3.刑事事件に発展する可能性はあるのか?
保険会社から詐欺罪、エンドユーザーから器物損壊罪で刑事告訴される可能性もあるかもしれませんね。
4.顧客のビッグモーター離れ?
これは当然あるでしょう。
5.内部崩壊のおそれは?
これも当然あるでしょう。もともと離職率の高い会社だったようです。
6.金融機関との関係は?
行取引約定書などに書かれている「期限の利益の喪失」条項に、よく、差押、不渡、その他、行政処分や信用を著しく損ねる行為があった場合は一括請求~といった内容の文言が書かれています。よって、追加融資や短期の書き換えは断られるかもしれませんね。
7.仕入れはできるのか?
中古車の仕入は、多くの場合、業者オークションです。業界用語でAAなどとび、大きいところではUSSやTAAなどがあります。最悪の場合、本件により、オークション入場資格が剥奪される可能性もないとはいえないかもしれません。
8.テレビCMは続けられるのか?
20日のニュースで、ビッグモーターのイメージキャラクターである佐藤隆太がCMを降板する方向で協議中というニュースが流れていました。
9.保険会社との関係は?
保険会社からは現在、水増し請求分の返還を求められ、既に一部を返金済みのようですが、これはまだ序の口でしょう。返還請求額はおそらくもっと増え、さらには損害賠償請求、代理店契約解除などの動きもあるかもしれません。
10.その他
現在の預金残高がいくらあるかわかりませんが、最悪の場合、全店規模で1~2ヶ月の営業停止になり、その後の売上も思うように回復せず、資金繰りが悪化し、テレビCMどころではなくなり、借入もできなくなり、資金繰り改善のために不採算店舗や遊休資産を売却、事業規模縮小、と、ここまではじゅうぶんありえると思います。
しかし、かなり大規模な会社なので、1~2ヶ月の営業停止処分や規模縮小くらいでは倒産には至らないでしょう。
倒産があるとしたら、古物商免許の全店規模での剥奪(取消)があった場合でしょうか。
(メルマガ『『倒産危機は自力で乗り越えられる!』 by 吉田猫次郎』2023年7月20日号より一部抜粋。続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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