桐島聡「逃亡49年」の裏で獄中死。大道寺将司 東アジア反日武装戦線元リーダーは最近の日本をどう見ていたか

kirishimasatoshi-eaajaf_eye
 

1970年代の連続企業爆破事件で指名手配されていた「東アジア反日武装戦線」のメンバー、桐島聡容疑者(70)を名乗る人物が警視庁に身柄確保された。仮に容疑者本人なら他の主要メンバーの多くが逮捕される中、実に49年間にわたって逃亡を続けたことになる。その間、グループのリーダー格だった大道寺将司元死刑囚は東京拘置所内で病死(2017年)。この記事では句集と著書から大道寺将司最晩年の胸中を辿る。(メルマガ『佐高信の筆刀両断』2023年7月21日号より/2024年1月27日記事タイトル更新)

詩人の心とどっちつかず

豆腐屋から転じて作家となった松下竜一は本当に口数の少ない人だった。三菱重工爆破事件を起こした大道寺将司らを『狼煙を見よ』に描いたが、大道寺の母親に会いに行っても黙ったままなので、たまりかねて母親が、「松下さん、トランプでもしましょうか」と言ったという逸話がある。

私も親しくしてもらったが、しかし、その無口に存在感があった。

ところで大道寺が俳句を始めたのは、鶴彬の川柳を読んだからだと聞いて、彼の句集『棺一基』(太田出版)と『最終獄中通信』(河出書房新社)を読み返した。1948年に釧路に生まれた大道寺は2017年に獄中で亡くなっている。享年68。死刑確定囚だった。

大道寺は1984年夏に東京拘置所から松下に手紙を書いた。そこには、大道寺が獄中の政治犯に松下の『豆腐屋の四季』(講談社文芸文庫)を読むことをすすめ、東京拘置所に突然、この本のブームが訪れたと書いてあった。

松下は、自分の本の中で、大杉栄の遺児のことを書いた『ルイズ―父の貰いし名は』などではなく、暗く孤独な青春の日々を短歌と短文で綴った『豆腐屋の四季』が政治犯たちに愛読されているということが、とても意外だった、と述懐している。

しかし、革命を夢見て一途な行動に走る人間たちは底に詩人の心を潜ませているのだろう。大道寺の母親が回想しているように、高校時代、大道寺は中原中也とアルチュール・ランボーが好きで、部屋の壁に中也の次の詩を書いて貼っていたという。

汚れっちまった悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れっちまった悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる

以下は略すが、大道寺の句を3首挙げよう。

生きてまた迎へてをりし今朝の春

死は罪の償ひなるや金亀子(こがねむし)

狼や見果てぬ夢を追ひ続け

『最終獄中通信』では2015年の時点で大道寺が創価学会(公明党)べったりの佐藤優を痛烈に批判し、「メディアは使い勝手がいいから多用しているのだけれど、しっかりしてくれよと言いたい」と注文をつけていることを知った。

また、東大教授の藤原帰一が「集団的自衛権は必要だ」という趣旨のことを『朝日』に書いたことに触れ、「ただ安倍政権の主張を全面的に認めるわけではなく、政府の主張にも野党のそれにも問題がある」と言う。では、どうすればいいのかは何も書いていない。

「米国へのシンパシーを強く感じる論調ではあります。いつも中途半端で自分の主張をしない人です。黒白を断定できないことは多いし、安倍たちのように間違った断定をされても困るけれど、どっちつかずというのも始末に負えない」と大道寺は指摘しているが、私には藤原と池上彰が重なって見える。皮肉を言えば、どっちつかずだから『朝日』は書かせているのだろう。

【関連】左派の「武勇伝おじさん」を黙らせた作家・雨宮処凛氏の“言葉”とは(佐高信)

【関連】小林よしのり氏が論破。安倍銃撃を「テロ扱い」エセ保守論客の売国ビジネス

【関連】「愛国」ではなく「愛アベ」が増えすぎた結果、日本の保守が変わってしまった(和田秀樹)

【関連】文鮮明夫妻“世界支配の夢”に利用された「日本会議」の自業自得。創建1250年の神社宮司が斬る保守派の大罪

【関連】森友学園問題の本質は「カルト」。高城剛氏が指摘する「偶然の浮上」

【関連】UFOと戦争、あるいは“空飛ぶ円盤”櫻井よしこと三島由紀夫の「愛国」をめぐる相違について

image by: 警視庁

佐高信この著者の記事一覧

活字にならなかった本当の想いを届けなければと、アナログ代表が初トライします。政治、経済、教育、文学etc。質問にも答えて行けたらと思っています。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 佐高信の筆刀両断 』

【著者】 佐高信 【月額】 ¥880/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎月 第1〜第4金曜日(年末年始を除く) 発行予定

print
いま読まれてます

  • 桐島聡「逃亡49年」の裏で獄中死。大道寺将司 東アジア反日武装戦線元リーダーは最近の日本をどう見ていたか
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け