“アメリカ没落”を察知したジャーナリストが解説、いま再び「ドル離れ」が起きている原因

Stock market trading graph in red color economy. usa flag dollar bill background. Trading trends and economic development. Effect of recession on US economy. Stock crash market exchange loss trading
 

再び起こっている「ドル離れ」

さて、前回の危機は、1999年のユーロ誕生。2000年、フセインがイラク原油の決済通貨をドルからユーロにかえたこと。2003年、イラク戦争。という感じではじまっていきました。「ドルに対抗する通貨ユーロが誕生し、広まっていったこと」が危機を誘因したのです。

そして、再び世界で「ドル離れ」が起こっています。ドル体制、今回の敵になっているのは「人民元」です。何が起こっているか、いくつか例を挙げておきましょう。

・SWIFTから排除されたロシアが、「人民元圏」にくみこまれた。
・ブラジル、アルゼンチンが、中国との貿易を人民元で行うようになった
・南米共同体で、「南米共通通貨構想」が復活してきた
・中国中央アジアサミットで、「運命共同体」を創ることが合意された。中央アジアが将来「人民元圏」に組み込まれることは、ほぼ確実。

さらに、『フォーブス』6月5日付。

インド、パキスタン、イランを含む9カ国の中央銀行から成るアジア決済同盟(ACU)は、既存の主要な国際決済網である国際銀行間通信協会(SWIFT)に代わる新たな金融メッセージシステムを今後数週間で立ち上げる計画だ。現在ACUの議長国を務めるイランの関係筋によると、先月24日に首都テヘランで開かれた会議で、1カ月以内に新制度を立ち上げることで合意に至った。

「アジア決済同盟」(ACU)。皆さんご存知でしたか?ウクライナ戦争でロシアが排除されて困った国際決済システム「SWIFT」に替わるシステムです。ちなみに中国には「CIPS」というのがあります。ACUの参加国は、バングラデシュ、ブータン、イラン、インド、モルディブ、ネパール、パキスタン、スリランカ、ミャンマー。要するに、この9か国が取引するときは、「SWIFTをつかわず、ACUでやりましょうよ」と。

メンツを見ると、インドが参加しているのがとても気になります。しかし、他のメンツを見ると、「ドル体制にとってそれほど脅威ではないかな」と思えるかもしれません。ですが、これは「ドル離れという大きなトレンドの一つ」ととらえるべきです。

というわけで、前回の危機は、「ドル 対 ユーロ」の戦いだった。これから訪れるかもしれない危機は、「ドル 対 人民元」が原因になる可能性が高いのです。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2023年8月11日号より一部抜粋)

image by: Shutterstock.com

北野幸伯この著者の記事一覧

日本のエリートがこっそり読んでいる秘伝のメルマガ。驚愕の予測的中率に、問合わせが殺到中。わけのわからない世界情勢を、世界一わかりやすく解説しています。まぐまぐ殿堂入り!まぐまぐ大賞2015年・総合大賞一位の実力!

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ロシア政治経済ジャーナル 』

【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

print
いま読まれてます

  • “アメリカ没落”を察知したジャーナリストが解説、いま再び「ドル離れ」が起きている原因
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け