“裏金メガネ”が大ピンチ。パー券疑惑で世耕弘成の手からこぼれ落ちた「総理への夢」

 

参院選の年に限り大きく落ち込んでいるパーティー収入

12月20日付朝日新聞朝刊の以下の記事からは、松本氏がかなり詳細に事実を述べていることがうかがえる。

会計責任者は一連の事実関係を認める供述をし、還流した裏金額を議員ごとに記載した調査リストも提出。時効が未成立の18~22年の5年間で、総額は約5億円という巨額の規模感だった。

どうやら松本氏は、特捜部の求めに応じ、調査リストまで作成して、説明したようである。「収支報告書に記載しなければならないのはわかっていた」とも供述しているという。秘書あがりではなく、永田町の垢にまみれていない分、特捜が落としやすい相手だったのかもしれない。

世耕氏は安倍政権で経産相をつとめたあと、2019年から自民党参院幹事長として参院議員をたばねてきた。それだけに、気になることがある。安倍派の政治資金収支報告書をみると、参院選の行われた年に限ってパーティー収入が大きく落ち込んでいるのだ。直近5年では、2019年、22年のいずれもだ。

その原因として、パーティー券売り上げのうち、改選を迎えた参院議員が集めた全額を派閥の収入とせずに、そのままキックバックしていたからではないかと特捜部に疑われている。

だとすれば、参院だけに認められた特別なやり方であり、安倍派内の参院派閥ともいえる「清風会」会長にして松本事務局長と親しい世耕氏が、そのようになった経緯をまったく知らないとは考えにくい。

朝日新聞の記事(12月23日)によると、21年11月に派閥に復帰し新会長に就任した安倍元首相が、派閥パーティーを5月に控えた22年4月、キックバックのとりやめを提案。当時の事務総長、西村康稔氏らが協議していったん還流廃止の方針を決めたことがあった。つまり、少なくともこの時点で、安倍派幹部は問題意識を持っていたということだ。

ところが、その旨を各議員に通知したところ、すでに資金還流を前提にパーティー券の販売を進めていた現場の議員側から反発を食らって、廃止方針はとん挫した。

その後、安倍元首相が7月に銃撃事件で死亡し、事務総長は高木毅氏に交代、最終的に方針は撤回され、従来通り裏金としての還流が9月にかけて実施されたという。

西村氏が廃止方針を決め、高木氏が撤回したと読めるこの記事は、検察から朝日の記者にリークされた情報をもとにしたものだろうが、高木氏に著しく不利な内容である。しかし、高木氏にすべての責任をなすりつけようとする“悪だくみ”のニオイがしないでもない。だいいち、このようなことが就任したての事務総長の一存で決められるはずがないのだ。

その年の7月に改選を迎えた参院議員が、自分たちの選挙資金を得るために、パーティー券販売で集めた売上金の全額をそのままキックバックしてもらっていたとすれば、その首謀者はいったい誰なのか。その答えを得るために、特捜部が、参院側の責任者である世耕氏を重要な捜査対象としたのは当然のことだ。おそらく松本氏は、世耕氏とこの件についてどのような話をしたかについても、詳しく特捜に供述しているのではないだろうか。

この記事の著者・新恭さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • “裏金メガネ”が大ピンチ。パー券疑惑で世耕弘成の手からこぼれ落ちた「総理への夢」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け