進むも地獄、引くも地獄。有利な状況でウクライナ戦争「停戦」が困難な状況に立たされた西側

2024.03.28
 

あまりに軽く扱われるウクライナという国家と市民の命

要するに、NATOにとって有利な状況を作って停戦するのは困難な状況だということだ。結局、話は振出しに戻るのだが、プーチン政権の存続を前提に、今後の戦略を考えざるを得ない。そうすると、ロシアの「敗北」という明確な結果のために、NATO参戦の検討に行きついてしまうまさに堂々巡りである。

停戦を巡る状況は、ウクライナが領土奪還できるかというシンプルなものではなく、まさに現実は泥沼で、「進むも地獄、引くも地獄」なのかもしれない。

1つだけ言えることは、ウクライナ戦争とは、NATO対ロシアの大国間の思惑で動いている。ウクライナはその戦場であり、街は破壊され、市民は生活を奪われ、次々と亡くなっていく。真に憤らなければならないのは、ウクライナという国家とその市民の生命が、なんと軽く扱われてしまっていることかということである。

image by: Pavlovska Yevheniia / Shutterstock.com

上久保誠人

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

print
いま読まれてます

  • 進むも地獄、引くも地獄。有利な状況でウクライナ戦争「停戦」が困難な状況に立たされた西側
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け