自民内部で意見対立?森喜朗をめぐるリーク情報の奇々怪々
岸田首相が自ら安倍派幹部の聴取に乗り出した目的は、処分をすんなり受け入れさせるための地ならしといった側面もある。
だが、森氏がどこまで関わっていたのかが岸田首相や同席した茂木幹事長、森山総務会長の政治的関心事であったことは間違いない。4人との会談は自ずからその“核心”に迫ることになった。
3月27日の聴取が終わると間もなく、日テレNEWSのスクープが放たれた。
岸田総理大臣から事情聴取を受けた安倍派幹部の一部が「キックバック再開の判断には森元総理大臣が関与していた」と新たな証言をしたことが分かりました。
森氏が派閥会長だった時代から裏金キックバックが行われてきたことは自民党議員たちへの聞き取り調査でほぼ明らかになっている。だが、22年のキックバック再開になぜ関与しなければならないのか。自分の創始した裏政治資金の仕組みを否定されるのが許せないからなのか。実に奇妙だ。
ひょっとしたら、裏金の一部を森氏に上納する仕組みがあり、それが今も続いているのかもしれない。森氏は議員を引退したあとも政治団体を持って多額の資金を集めてきたことがわかっている。
それと、気になるのは、この情報を漏らした「安倍派幹部の一部」とは、4人のうち誰を指すのかということだ。「一部」というからには1人ではなく複数の証言があったに違いない。森氏に疎まれ派閥の後継者レースから排除された下村氏は真っ先に疑われる立場だが、密室のことでもあり、誰が漏らしたとしても不思議ではない。
日テレの報道は、29日早朝の朝日新聞によっても裏打ちされた。
自民党安倍派の裏金事件をめぐり、岸田文雄首相が行った派閥幹部への聴取で、一度は廃止した還流の復活を決めた2022年8月以降について「派閥への森喜朗元首相の影響が強まった時期と重なる」とする証言が出ていたことがわかった。聴取にかかわった関係者が明らかにした。同年7月の安倍晋三元首相の死去後、最大派閥のまとめ役がいない中、派閥の運営全般に影響力を強めた森氏が還流復活の判断に関わった可能性があるとみて、党が調査に乗りだすかどうかが焦点だ。
森氏が「判断に関与」(日テレ)、「判断に関わった可能性」(朝日)と、強弱の違いはあるが、安倍派幹部への聴取で、森氏の関与をめぐる話が出ていたのは間違いないようだ。
ところが同じ29日の夜に共同通信が配信した記事は、前記二社の報道に冷や水を浴びせるような内容だった。
派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、自民党が既に、安倍派会長経験者の森喜朗元首相側から水面下で話を聞き取っていたことが分かった。資金還流が始まった経緯や2022年に復活した状況について尋ね、関与なしと認定したもようだ。追加聴取は現時点で想定していない。
もうすでに自民党が森氏から話を聞き、裏金作りに関与していないと認定したから、あらためて聴取する必要はないというのだ。
どうやら、自民党の内部で森氏に関する意見が対立し、それぞれの派が都合のいい内容をメディアにリークし、報じさせている気配である。