若手から出なかった「自民党をぶっ潰す」の声。政権与党が衆院補選2選挙区で候補者すら立てられなかった裏事情

2024.05.01
 

無党派層を総獲りする「シン・野党連合」という戦略

現在の無党派層が左派の政策を支持していない理由は、各種世論調査で自民の支持が下落し、立民など左派野党の支持も上がらない一方で、無党派層が増え続けることが示す。国内政策について「左傾化」し、バラマキを際限なく続ける自民党にも、それと政策志向で違いがみえない左派野党にも、無党派層が満足していないことを示している。

無党派層は、少子高齢化、若者支援、物価高など経済対策などに有効な手を打てず、IT化、デジタル化、グローバル化への対応が遅れて、過度の円安が止まらず国民の資産が減っていく、国力が明らかに低下している現状に不安を持っている。ゆえに、日本の成長をもたらす地方分権・行政改革・規制緩和などの改革的な政策を望んでいる。

次期総選挙で政権交代を実現するには、コアな支持者を固め、自民批判で無党派の一部を獲るだけでは十分ではない。それよりも、無党派層を総獲りする戦略を考えるべきだ。

立民は、共産など左派勢力を切って、維新や国民民主などと中道主義的な政策路線を取るべきだということだ。筆者は「シン・野党連合」と呼んでいる。

自民への強烈な逆風で隠れているが、野党が抱える本質的な弱点は、政策面で自民との違いを明確に出せないことだ。自民は日本国民のニーズに幅広く対応できる、政策的には何でもありの政党だ。野党との違いを明確にするのではなく「野党と似た政策に予算を付けて実行し、野党の存在を消してしまう」のが自民党の伝統的な戦い方である。

特に、立民・共産など左派野党は自民党との違いを出すのが困難だ。左派野党が「弱者救済」を訴えても、自民は既に補助金・支援金をバラまいている。「野党の皆さんもおっしゃっているので」と躊躇(ちゅうちょ)なく予算を増額して実行できる。その場合は、もちろん自民の実績となる。ゆえに、左派野党は事実上の「自民の補完勢力」と化してきたのだ。要するに、憲法、安全保障政策の大きな違いに隠れているが、実は国内政策の違いがないことが、野党を万年野党化し、自民党の長期政権を可能にしてきたことがより重要だ。

一方、「シン・野党連合」は自民との違いを明確に打ち出せる。自民政治が抱える問題は「中央集権体制」の限界が露呈したものだ。「地方主権」を自民への対抗軸として打ち出すべきだ。以下、実現可能性を度外視してシン・野党連合の政策を提案したい。

まず、「地方を巻き込んだ政治改革」だ。「政治とカネ」の問題は、国会議員の地方での活動量の多さが本質だ。国会議員は選挙で票を得るために、地元の支援団体・地方自治体・地方議会議員など、さまざまな地元の支持者に便宜を図ってきた。

そうした癒着を避けるため約30年前に「選挙制度改革」が行われた。だが「小選挙区比例代表並立制」の導入後も、国会議員の活動が地元中心から議会中心へと変化することはなかった。それどころか、議員と地元の関係はより密になった。議員は政治資金のやりくりに苦しみ、派閥や地元の指示に従って、抜け道を探して裏金を受け取る行為に走った。

「政治とカネ」の問題の解決には、1990年代の政治改革がやり残した「議員の地元活動」の縮小が必要だ。そうでないと、地元対応にカネがかかる状況は変わらない。議員は新たな錬金術を考え出すことに必死になる。

「政治改革」の実現は、自民に対して罰則規定が甘いと批判するだけでは十分ではない。「地方のことは首長・地方議員が担う」「国会議員は地方から切り離され、国会での政策立案に集中する」といった、地方を巻き込んだ大胆な切り分けが必要だと主張する。

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