トヨタ・業界・国交省。自動車型式指定不正問題で「最も罪深い」のは誰だ?クルマの安全を脅かす事なかれ主義日本の大問題

 

(4)「規定と異なる台車重量」に潜む「深刻な問題」とは?

トヨタの会見内容では、(1)から(5)は「日本ルールには合致していない」ので、違反は違反であるということは理解しているようです。ですが、多くの場合「より厳しい条件で試験していることから、安全性は確認」できるので、「クルマを回収したり、再整備する必要はない」という立場を取っています。

その一方で、(6)については、明らかに日本の試験車両には問題があり、それを直して再試験すべきなのを怠ったので、反省しているとしています。この説明については、まあそうなのだと思いますが、この(6)については、とにかく北米の大ヒット車「RX」ですので、開発も北米、最終仕様の固めも北米ということで日本市場は「オマケ」と考えていても仕方がないと思います。

ですが、その日本市場については出力を抑える自主規制の対象になる中で、恐らく試験車両の整備が型式認定のスケジュールに合わなかったのでしょう。ということは、他社の事例と似たりよったりで、確かに他の(1)から(5)と比較すると、悪質は悪質と理解して良さそうです。

では、(1)から(5)についてですが、私としては中でも(4)には、非常に深刻な問題があると感じています。トヨタは、衝突試験の際に、日本基準の1100キロより重たい1800キロの評価用台車を使用したということです。そう言われると、第一印象としては豪華なSUVやピックアップトラックなど、重たいクルマの走っている欧米のデータを流用したのは、やはり安易という印象を持ちがちです。

ですが、私は違うと思います。世界で1800キロという数字が採用されている意味は何か、それはEVです。現在、欧米でも中国でも、急速にEV車の比率が高まっています。そして、EVは重いのです。巨大な電池を搭載しているので重いのです。具体的には、

  • テスラ「モデル3」・・・1600~1700キロ
  • テスラ「モデルS」・・・1900~2200キロ
  • テスラ「モデルX」・・・2350~2450キロ
  • 中国BYD「ダイナスティ」・・・2360~2560キロ

ということで軒並み2トンを超えています。トヨタがスバルブランドと双子車として鳴り物入りで発売しているbz4xにしても、カラの車両重量で1900キロですから、やはり重いです。

つまり、世界中で2トン前後のクルマが猛烈な勢いで増えているわけです。ということは、どう考えてもガソリン車を含む自動車の型式認定の際には、1100キロの台車を衝突させた実験ではなく、1800の方が現実的と言えます。要するに、日本の基準は甘いというより、実情に合っていないのです。

print
いま読まれてます

  • トヨタ・業界・国交省。自動車型式指定不正問題で「最も罪深い」のは誰だ?クルマの安全を脅かす事なかれ主義日本の大問題
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け