トヨタ・業界・国交省。自動車型式指定不正問題で「最も罪深い」のは誰だ?クルマの安全を脅かす事なかれ主義日本の大問題

 

トヨタ・自工会・国交省。三位一体の「事なかれ主義」を猛省せよ

どうしてこんな事になったのでしょうか?これが本稿の2点目の議論です。例えば、この(4)「規定と異なる台車重量」について考えてみると、色々な可能性が推測できます。

「業界はEV時代、つまり重いクルマの時代に合わせた基準を希望しているが、その意見が国交省に伝わらなかった。自工会(一般社団法人日本自動車工業会: JAMA)として意見をまとめるのに失敗し続けた」

「役所の前例主義が悪い方向に作用した。しっかり現実へのアップデートを主張すべき自工会にも役所の天下り役人がいて、事なかれ主義が残っていた」

「一部の企業としては、柔らかくて軽い軽四を認めるという前提では、このカテゴリについて一気に厳しくすることはできないという立場もあった」

あくまで憶測ですが、このようなメカニズムが働いて、脱法状態が「まかり通っていた」ということはあり得ると思います。個人的には、EVはどんどん増え続けているのですから、1800キロでも足りないわけで、2300キロぐらいで試験をして当然と思います。トヨタご自慢のbz4xの場合、車両総重量、つまり定員の乗員と最大積載量の荷物を乗せると、2300近くになるからです。

とにかく、自動車は一歩間違えば人の命に関わる乗り物です。乗員を守らなくてはならないだけではなくて、凶器にもなります。ですから、どんなに形式主義であっても法令遵守が大事という考え方が成り立ちます。その一方で、安全を至上とするのであれば、世界より甘い基準を手直しせず、より厳しい基準でのデータは違法とするという役所の姿勢には疑問が残るという立場もあると思います。

さらに言えば、EVという重いクルマと一緒に走る中で、はるかに甘い基準で審査していたのであれば、そのこと自体が安全性への配慮不足だとも言えます。この1点だけ取っても、行動に移さなかった自工会と、旧態依然とした基準を金科玉条としていた国交省は猛省が必要と思います。

今回お叱りをいただいた読者の方は、こうした脱法行為を放任すると、トヨタは過ちを繰り返すだろうと、厳しい指摘をされています。全くその通りと思いますが、もっと悪いシナリオも考えられます。

仮に、自工会がこのまま意見をまとめることができず、まともな要望ができない、その結果として、日本の検査ルールが旧態依然としていて、余計なコストがかかるという場合を想定してみましょう。その場合は、もしかするとトヨタなどは「1車種、また1車種と静かに日本市場から去っていく」かもしれません。

開発と生産は十分に空洞化してしまい、日本のGDPへの貢献は限定的となっている自動車産業ですが、最後には市場としても無視するかもしれないのです。そうした危機感を持つことは必要と思います。

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