本当に「大規模な不正」「幅広いテストの不正」だったのか
3番目は、日本発の外電という問題です。
この事件ですがごく初期の段階から、「世界でも日本車の信頼を損ねている」とか、「各国でも報道」という話になっています。確かに日本での法令違反はありました。ですが、海外では何の問題もないのです。純粋に日本国内マターです。
にもかかわらず、例えばAP通信は、
TOKYO (AP) ― Toyota Chairman Akio Toyoda apologized Monday for massive cheating on certification tests for seven vehicle models as the automaker suspended production of three of them.
The wide-ranging fraudulent testing at Japan’s top automaker involved the use of inadequate or outdated data in collision tests, and incorrect testing of airbag inflation and rear-seat damage in crashes. Engine power tests were also found to have been falsified.(以下略)
出典:Toyota apologizes for cheating on vehicle testing and halts production of three models | AP News
などと報道しています。massive cheating(大規模な不正)だとか、wide-ranging fraudulent testing(幅広いテストの不正)というのは、かなり激しい言葉です。
少なくとも、内容を精査して「50度でいいのにより厳しい65度で衝突させた」とか「ずっと重い台車で試験した」「確実にエアバッグを発火させて保護性能を検査した」など、具体的な内容を理解し、安全面への影響はないことを確認していたら、こんな強い言葉は書けないはずです。
とにかく、massive cheating(大規模な不正)だとか、wide-ranging fraudulent testing(幅広いテストの不正)というのはいけません。こういうことを英語で発信すると、場合によっては大きな誤解を生みます。最悪の場合は、ブランド価値の毀損が起きてしまいます。
この記事では、後の方で The issue does not affect Toyota’s overseas production.(この問題はトヨタの海外での生産分に関しては何の影響もありません)と断ってはいますが、多くの読者は読み間違える危険があると思います。
記事は署名原稿ですが、書いた方は産業や技術とは全く専門が違うようですので、あまり責める気にはなれません。問題はこうした内容で記事を書かせ、豊田章男会長の写真とともに、センセーショナルに仕立てて配信したデスクにあると思います。