ハイデガーといえば「現存在」や「死」をテーマにした有名な哲学者。そのハイデガーの哲学を物語で学ぼうというユニークな一冊の内容を、無料メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』の著者である土井英司さんが詳しく紹介しています。
【ハイデガーの哲学をストーリーで学ぶ】⇒『あした死ぬ幸福の王子』
飲茶・著 ダイヤモンド社
こんにちは、土井英司です。
本日ご紹介する一冊は、極めてユニークなタイトルの本。
じつはこれ、ハイデガーの哲学を、物語で学ぼうという試みなのです。
編集者によると、作家の飲茶さんとタッグを組んで構想2年、執筆・編集に3年かかった力作らしく、確かに読み応えがあります。
「残念ながら王子、あなたは明日死にます」
物語では、主人公の「オスカー王子」が余命1カ月の宣告を受け、そこから人生を深く考え始める。
そこにハイデガーの哲学を説く、哲学者の老人が現れるという設定です。
老人は、死を前にして狼狽する王子に、こう語りかけます。
「自分の死期を知らされるなんて、おまえはとてつもなく幸福なやつだな」
高齢化社会に伴って、長生き本がベストセラーとなり、最近では80歳本、100歳本も売れていますが、どんなに長生きしたところで、死は必ずやってきます。
なるべく長く生きたい、なるべく多くを獲得したいと考える人生は、以前ご紹介したバタイユが言うように、結局は貧しさに行き着くのです。
人間が有用性の原則の前に屈するようになると、人間は結局は貧しくなる。獲得する必要性、この貪婪さが、人間の目的になる──人間の巨大な活動の終局であり、目的になってしまう
『呪われた部分 有用性の限界』ジョルジュ・バタイユ・著 筑摩書房
では、ハイデガーは、人生をどう捉えていたのか?
一般的なイメージでは、ハイデガーは「死とは何か?」「人間とは何か?」を問いかけた哲学者として有名ですが、本書によると、実際のところ彼が哲学のテーマに選んだのは、「存在とは何か?」でした。
ハイデガーは、「存在とは何か」を考えるために「人間とは何か」を問いかけ、「人間とは何か」を考えるために「死とは何か」を問いかけた。
とはいえ、物語の老人は、ここで安易な結論に至ることを許しません。
老人は、こう言います。
「(前略)ハイデガーの哲学を正しく理解したいと思うのであれば根気強く段階を踏まなくてはならない。そうしないで結論だけを聞こうとするなら、せいぜい『人間は死ぬから、人生が輝くのだ』くらいの見せかけの理解しか得られないだろう。そんな口当たりの良い、上っ面の知識を、おまえは欲しいわけではあるまい」
ここからいよいよ存在の話になるのですが、これが深い。
ぜひ以降は、本文を読んで、ディープなハイデガーの世界に浸ってください。
きっと、良い人生を生きるためのヒントが得られると思います。