小池氏にとって裏目に出た「後出しジャンケン」戦術
小池氏が出馬表明を遅らせた理由は、おそらくもう一つある。自民党の支援を見定めることだ。
4月の衆院東京15区補選で、小池氏は自らが推した候補が自民党の支援を事実上拒み、惨敗した現実を目の当たりにした。野党第1党の立憲民主党が、7年前の「希望の党騒動」で小池氏自身が「排除」した人々を中心に結党した政党であることを考えれば、小池氏は今後「非自民」「野党系」の立場で振る舞うのは難しい。自民党が裏金問題でどれだけ国民の支持を失っていても、自民党の組織票に乗って選挙を戦うことは、死活的に重要だったのだろう。
小池氏は、自民党都連が10日の総務会で「小池氏が出馬表明したら支援する」との方針を決めたのを確認すると、「保守の方々の支援は大変心強い」と述べ、2日後に満を持して出馬表明した。
しかし、この戦術は結果として、小池氏にとって裏目に出たと思う。
出馬表明見送りは結果として、蓮舫氏の出馬で「(小池氏の)計画に狂いが生じた」(読売新聞)という印象を、有権者に与えた。突然現れた対抗馬に自らの戦略を「狂わされた」印象は、小池氏の「堂々たる現職」イメージを、一定程度崩すことにつながった。
区市町村長からの「3選出馬要請」に自作自演疑惑
小池氏が出馬表明を遅らせている間に、さらに「意外な」事態が生じた。都内区市町村長からの「3選出馬要請」の「自作自演」疑惑である。
小池氏は都議会開会前日の28日、都内の52区市町村の首長から、3選に向けた出馬要請を受けた。都内の自治体首長の約8割にあたる。同じ日に自らが特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」や都議会の公明党からも出馬要請されており、小池氏はこれらの要請を受ける形で、翌日の都議会で堂々の出馬表明をする段取りだった。
蓮舫氏の出馬表明でこのシナリオが崩れ、小池氏が29日の出馬表明を見送ると、同日に調布市の長友貴樹市長が記者会見で、出馬要請について「知事サイドから打診があった」と発言。日野市の大坪冬彦市長も「(知事サイドからの)応援要請だったはずが、なぜか『出馬要請』になってしまった」と続いた。「出馬要請は小池氏側からの圧力?」との声が上がり、小池氏は「私からの依頼はない」と釈明するはめになった。
小池氏が当初予定通りに出馬表明すれば、早い段階で「小池vs蓮舫対決」が大きく注目されただろう。そこで小池氏が「受けて立つ現職の包容力」をアピールできれば、小池氏自身にもプラスの展開があったかもしれないし、出馬要請問題もさほど注目されなかったかもしれない。みすみす出馬表明を遅らせたがゆえに、結果として「悪目立ち」してしまった格好だ。