日本とミャンマーとの親日利権
問題はサッカーだけではない。
福岡市動物園はミャンマーからアジアゾウ4頭の受け入れ準備を進めている。クーデター前の2019年12月、姉妹都市のヤンゴン市と結んだ覚書に基づく事業で、福岡市からもライオンなどを提供するという。
しかしながら、ミャンマーでゾウは、かつて王権の象徴とされた特別な動物だ。すなわち、ゾウの受け入れはクーデター後の軍政の容認と受け止められかねない(*4)。
このような日本政府のミャンマー”優遇”の背景には、日本右翼の”親日利権”が隠されている。
そもそも、日本の自衛隊は、約2000人の民間人を殺害した軍の関係者を受け入れ、訓練を施している。
日本政府は、委託を受けて訓練を実施できる自衛隊法の規定に基づき、35カ国の軍関係者を留学名目で受け入れてきた。
そのうち、ミャンマーについては民政移管後の2015年度に開始。2021年度までに国軍の幹部や幹部候補生ら30人を受け入れた。クーデター後に受け入れているケースもあった(*5)。
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「アジア最後のフロンティア」、ミャンマーに巣食う日本右翼
ミャンマーの現行憲法には、国会議員の25%や国防、内務、国境の3大臣を総司令官が選ぶ規定がある。しかし、ミャンマー国軍の成り立ちには日本との深い関係がある。
具体的には、第二次世界大戦中、旧日本軍が反英運動を指導するスーチー氏の父アウンサン(故人)らに訓練を施して結成させた「ビルマ独立義勇軍(BIA)」が国軍の母体となった。
旧日本軍はBIAとともにイギリスを追いやった後、ミャンマーを占領。ただし、旧日本軍の高圧的な振る舞いは評判が悪く、現地では「キンペイタイ(憲兵隊)」という単語が残る。
また、西部ラカイン州の支配権争いでは、旧日本軍が仏教徒のラカイン人と英国がイスラム教徒(ロヒンギャ)を武装させたことがあった(*6)。
これらの歴史的な衝突は、現在も続く対立の一因に。そして日本とミャンマーの関係は「アジア最後のフロンティア」と呼ばれる地で結び付く。
また、一般社団法人「日本ミャンマー協会」には国会議員や大手企業が多く関わっている。
最高顧問の麻生太郎氏が就き、理事には甘利明、加藤勝信、浜田靖一の各自民党衆院議員、立憲民主党の枝野幸男前代表らが在籍する(*7)。
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■引用・参考文献
(*1)「“ミャンマー軍が利用も”日本サッカー協会に協定破棄申し入れ」NHK NEWS WEB 2024年6月6日
(*2)北川成史、曽田晋太郎「日本サッカー協会の人権感覚が疑われている パートナー協定を交わしたミャンマー連盟は独裁政権にベッタリ」東京新聞 2024年5月28日
(*3)北川成史、曽田晋太郎、2024年5月28日
(*4)曽田晋太郎、岸本拓也「サッカーも動物園も…日本は無神経すぎないか ミャンマーとの交流に潜む国軍のプロパガンダ利用の恐れ」東京新聞 2024年6月1日
(*5)北川成史「民間人を弾圧するミャンマーの軍人を留学させ、訓練を施す日本 クーデター後も受け入れ継続」東京新聞 2022年6月19日
(*6)北川成史、2022年6月19日
(*7)北川成史「在日ミャンマー人の間で評判悪い日本の元国会議員は何をしたのか クーデター起こした国軍幹部と…」東京新聞 2022年8月14日
(『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』2024年6月15日号より一部抜粋・文中一部敬称略)
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image by: Mehr News Agency, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons









