ボケ老人バイデンを米民主党が切れぬ訳。トランプに惨敗の大統領選TV討論会、「もしトラ」から「ほぼトラ」へ身構える世界

 

“独裁者”が「きれいなトランプ」を演じた理由

一方でトランプの方は、快調に毒舌を展開して行ったかというと、彼も決して絶好調ではなかったように見受けられました。具体的には、2つ指摘ができます。

1つは、バイデンが余りにも不調であった中で、「手負いの敵を深追いする」ことは全くしなかったということです。「バイデンは大丈夫か?」というような、いかにも「いたずらなトランプ」といった表情で「面白がっていた」シーンは数多く見られました。

ですが、トランプは発言としてバイデンの健康問題を突くことは限られていました。

それは、武士の情けをかけたというのではないように見えました。そうではなくて、トランプもまた、陣営が詰め込んで「予習」させた「内容」を消化するのに精一杯ということだったのだと思います。

もう1つは、トランプの主張が意外と「穏健派」向けのバージョンだったということです。

中絶問題にしても、コロナ問題、ロシア問題など、通常の「ラリー形式の演説会」では無茶苦茶な内容を喋っているトランプですが、このTV討論での発言には一定の抑制が見られました。

この「穏健バージョン」ですが、1期目の政権当時にも見られた現象です。つまり、共和党のクラシックな支持者の考え方から、大きく逸脱が見られた場合には、それを修正するかのような「割合とまとも」な演説をすることが多くあったのでした。

今回もそれと同じで、とにかく無党派中間層や、共和党の穏健派の支持を取り込むのに必死という感じでした。

ただ、全体的に8年前とか4年前と比較すると、アッケラカンとまとめるテクニックはやや鈍っているようで、とにかく「言われたこと」「練習してきたこと」を詰め込んで話すのが精一杯という感じがありました。もっとも、今回は相手が喋っている時間帯はマイクがオフになっているということで、臨機応変な「ツッコミ」ができなかったということはあると思います。

ですが、トランプ節ということでは、かなり抑制があり、悪く言えば不調、よく言えば常識的という内容であったと思います。その意味合いについてですが、この人の一挙手一投足について、あまり大真面目に受け取るのは適切ではないのかもしれません。ですが、とりあえず、現時点では「選挙に勝つためには中間層や穏健派を取り込むのが最大のテーマ」ということを理解して実行しているのは間違いないと思います。

では、この延長で2期目のトランプ政権の内容も「常識的な共和党政権」になるかというと、そこは分かりません。ですが、今の時点では、相当なカネとブレーンが入っており、とにかく「勝つため」に多くのリソースが投入されているのは間違いないようです。その上で、有罪判決など「負の部分」に対して懐疑的な穏健派への「説得」あるいは「トランプ支持への一本化」が最大の課題となっているのだと思います。

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