3.中国酒の魅力
第三の魅力は、中国酒だ。脂っこいガチ中華料理には、さっぱりとしたビールと紹興酒が合う。紹興酒はもち米が原料の醸造酒で、アルコール度数は14~18度。ほんのりとした甘みがあり飲みやすい。昔は、砂糖や干し梅を入れて飲む人が多かったが、現在はストレートで飲む人がほとんどだ。室温で飲むか、お燗で飲むかを選ぶ。
一般的には3年ものか5年物、10年物まで。甕だしの場合、さっぱりした上澄みと、濃厚な底の部分を選べることもある。
昔の中国では、紹興酒は料理酒で、飲む酒ではないとされ、置いていない店も多かったが、最近は多くの銘柄が存在する。
中国の宴席の正式な酒は、白酒(パイチュウ)で、高粱や小麦が原料の40度以上の透明な蒸留酒。「乾杯」と言って、小さなショットグラスで一気に飲み干し、グラスの底を相手に見せる。
最も有名なのは「貴州茅台酒」で、一時期はバブルとなり価格が数十万円に高騰した。このボトルがテーブルに置いてあると、宴席のグレードが上がるとされている。
もちろん、労働者でも飲める安い白酒もある。正直言って、日本人には違いがよく分からない。
多くの日本人は、白酒は匂いがきつ過ぎて飲めないという。しかし、中国で慣らされると、最初は臭いと思っていた匂いが華やかに感じられるようになる。意外に、翌日には残らないのも特徴の一つ。
ガチ中華というなら、白酒にも挑戦してほしいものだ。
4.ガチ中華は異文化体験
まとめると、ガチ中華の魅力はある種の「異文化体験」である。
中華料理は、中華包丁と中華鍋でほとんどの料理を素早くつくる。一度に数人分の料理を作り、大皿に盛り付け、みんなで取り分けて食べる。とても合理的だ。
日本料理は、料理によって器を選び、一人分の料理をきれいに盛り付ける。味だけではなく、目でも食べるのだ。
中国人は、日本料理は高コストだと言っていた。日本人には当たり前のことなので、気にもしていなかったが、考えてみればその通りだ。
中華料理は素材の鮮度の悪さを、強い味付けでごまかしている。刺身のように生で食べる料理はほとんどない。冷たい料理も稀だ。ニンニクやショウガなどのスパイスは毒消しの意味もあるのだろう。
日本人は、料理もご飯も箸で食べるが、中国や韓国では、ご飯は匙で食べる。中国の箸は太くて長く端は四角い。韓国の箸は金属製で細く平たい。日本の箸は、軽くて先端が尖っており、ご飯粒でもつかめる。
日本料理は箸で食べられるような大きさに切り分けて出てくる。西欧料理は、大きな肉や魚をナイフで切り、フォークで刺して食べる。日本人にとって、西欧料理は切るとか刺すとか、野蛮な感じがするのだ。
日本料理と対極にあるガチ中華をたべて、大陸人の気分を思い描くのも楽しいではないか。
この記事の著者・坂口昌章さんのメルマガ