アメリカを「日本のような国」にするべきか否か?
民主党の左右対立の中で、経済政策として一番シャープに意見が分かれているのは、医療保険問題でしょう。
オバマが創始した「オバマケア」は、既存の営利企業による民営医療保険を温存したうえで、加入を強制し、その代わりに自営業の人々などには半額近くを政府が助成するものです。
共和党はその廃止を主張していますが、民主党左派は反対に「英国や、日本、カナダのような」政府による公営保険を主張しています。この点で、左派はオバマ、クリントンと激しく対立する存在です。
問題は、ハリスの立場が明確に穏健派であることです。以前から問題になっているのは、ハリスの持っている人権の闘士イメージと、経済政策は穏健派という組み合わせにミスマッチ感があることです。支持者の中でもこの経済政策の左右対立があります。
例えば、ハリスの熱狂的な支持者は「Khive(Kハイブ)」と呼ばれています。彼らは、今回のバイデン撤退ハリス支持の報を受けて、SNSなどでココナツとヤシの絵文字を展開して喜んでおり、改めて存在感を示しています。
ですが、この「Khive」は、過去に左派と激しく対立した歴史があり、例えばサンダースやAOC(オカシオコルテス議員)などは、本稿の時点ではハリス支持を打ち出していません。
党内融和の雰囲気がないわけではなく、例えば左派の代表格の一人、エリザベス・ウォーレン議員(上院、マサチューセッツ選出)などは、早速ハリス支持を表明しています。ですが、この先、AOCなどの急進左派を含めて、ハリスは民主党の大統領候補として活動するだけでなく、民主党の全会員議員候補に対して「与党党首」として選挙戦を牽引しなくてはなりません。
そこでバイデンと同様に行動できるかは大きなハードルです。2016年に左右対立を引きずる中でヒラリーがトランプに負けたミスを繰り返さないということは大切です。