茂木敏充氏を「見捨てた」麻生太郎氏の腹の内
麻生氏からも、森山氏からも総裁選への支持を得られず、出ても勝ち目がないと悟った岸田首相は8月14日、不出馬を表明した。そしてその翌日には、閣議で大臣たちにこう呼びかけた。「総裁選に名乗りを上げることを考えている方もいると思う。気兼ねなく、堂々と論戦を行ってほしい」。こうなった以上、自らの退陣表明が党を救った形に持っていくほうが得策という考えに傾いていったのだろう。
これに誘い出されるように、河野太郎デジタル相、高市早苗経済安全保障相、齋藤健経済産業相、上川陽子外相、林芳正官房長官といった現職閣僚たちがいっせいに総裁選へ向けて動き始めた。
森山氏とともに岸田首相退陣への道筋をつけた麻生氏は大仕事を抱え込んだ。総裁選出馬に意欲を燃やしてきた茂木敏充幹事長にどのような態度をとるか決断しなければならなかった。なにしろ、岸田政権を支えてきた三派連合の一角、茂木派を率いる領袖であり、ずっと麻生氏がポスト岸田の一番手として期待していた盟友である。
麻生氏がつきつけた結論は、茂木氏にとって厳しい内容だった。下記は8月16日のFNNプライムオンラインの一部である。
岸田首相が不出馬を表明した14日夜、総裁選への立候補に意欲を示す茂木氏と会談しましたが、その際、「麻生派として支持するのは難しい」と伝えていたことがわかりました。麻生氏は、麻生派に所属する河野デジタル相が出馬した場合、「河野氏を支持するのが筋」だとの考えで、派内の意見も聞いた上で今後調整を進める方針です。
茂木氏は裏切られた気分だっただろう。これまで麻生氏を信じて、ともに岸田政権を支えてきたのだ。党内における茂木氏の人気はぱっとせず、麻生氏だけが頼りだ。おまけに、一枚岩とはいえない茂木派からは、加藤勝信氏も総裁選に意欲を示している。キングメーカーである麻生氏が、麻生派、岸田派、茂木派をまとめて自分を支援してくれるのではという胸算用は無残に砕け散った。
麻生派の支援を受ける構図になったとはいえ、河野太郎氏を取り巻く状況も微妙だ。河野氏が素直に頭を下げて頼みに来たため、麻生氏がその気になったものの、麻生派内で河野氏への支持は広がっていないといわれる。