延命されているのは中小企業ではなく大企業という現実
次に、竹中平蔵氏の「日本の中小企業は補助金などで優遇され過ぎている」という発言について、その真偽を確認してみましょう。
中小企業の補助金の代表的なものに、雇用調整助成金というものがあります。
これは、ざっくり言えば年間の売上などが下がるなど一定の条件を満たした場合、中小企業では従業員の賃金の3分の2、大企業では賃金の2分の1を助成するという制度です。
助成率において、中小企業の方が大企業よりも優遇されているので、「中小企業が補助金で優遇されている」という論拠になったりしているのです。
またこの雇用調整助成金は、不正受給などがたびたび指摘されています。
竹中平蔵氏も「悪い中小企業支援策」としてこの雇用調整助成金をたびたびやり玉にあげてきたのです。
しかし、この雇用調整助成金というのは、実は中小企業にとってあまり使い勝手のいいものではありません。
条件や手続きが複雑なため、中小企業がすぐに手を出せるものではないのです。
そのため、中小企業よりも大企業の活用率の方が高いのです。
たとえばコロナ禍でどこの企業も苦しかった2020年度では、上場企業の約18%がこの雇用調整助成金を活用していました。
しかし中小企業で雇用調整助成金を活用していたのは1~2%だったのです。
つまりは、実質的に雇用調整助成金は中小企業を救うためのものではなく、大企業のためのものなのです。
現在の日本では、様々な中小企業支援策が講じられ、表向きは中小企業が優遇されているように見えますが、実際は中小企業が本当に助かるような支援策はほとんどないのが現状です。
また政府が景気対策も兼ねて支出する公共事業費やエコ関連費なども、そのほとんどは大企業が享受しています。
公共事業などは、一定以上の規模の企業でないと受注できない仕組みとなっており、ゼネコンなどが受注し利潤の大半を分捕り、実際の仕事は非常に安い報酬で下請け孫請けの中小企業が行なっているのです。
中小企業と大企業ではどちらが国の支援を喰っているかというと、圧倒的に大企業です。
税金の補助を受けて延命されているのは、中小企業ではなく大企業の方なのです。
そういう日本経済の実態をまったく知ろうとせず、ただ制度やデータの上っ面だけを見て、「中小企業は多すぎる」「中小企業は優遇され過ぎている」などと暴言を吐く竹中平蔵氏は、どれだけ経済オンチか、ということなのです。
次回もこの話を掘り下げたいと思います。
(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2024年9月1日号より一部抜粋。全文はご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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