石破の謎めいた言動を解説しようと試みた「朝日」の指摘
この石破の謎めいた言動を解説しようと試みた数少ない指摘は、「朝日新聞」原真人=編集委員によるもので、10月19日付「多事奏論」で、こう書いている。
▼(石破氏は)7年前、日本記者クラブでの講演でアベノミクスや異次元金融緩和を批判していた。「こんな政策をいつまでもできるわけがない」「おかしくないかと誰も言わない自民党は怖い。大東亜戦争の時がそうだった」とも。
▼(にもかかわらず)石破氏がいまデフレ脱却を掲げるのは先月27日の自民党総裁選に対する株式市場の反応を見たせいだろう。
▼1回目投票で高市早苗候補が1位通過すると円安ドル高が進み、日経平均株価は前日に比べ900円も上昇した。ところが石破候補が決選投票で逆転すると円高ドル安に転じ、週明け30日の平均株価は一時2000円超も下げた。今年3番目の下げ幅となったこの株価下落をマスメディアは「石破ショック」と報じた。
▼市場はあからさまにアベノミクス路線を継ぐ高市氏を「買い」、石破氏を「売り」とみなした。石破氏はその見方を変えたい一心で節を曲げてはいないか……。
本当にそうなのだとしたら、私は石破の経済観念の根本を疑う。そもそも政治家は、株価の変動如きに一喜一憂して自らの信念や政策主張を左右すべきではない。株式市場の動向は、中長期的に見ればその国の経済の先行きをある程度は反映していると言えないことはないけれども、短期的には、何か株価を上下させる兆候はないかと鵜の目鷹の目で探し求めている「株屋」の心理的動揺以外の何物も反映しておらず、尚且つその株屋連中は株価が上がろうと下がろうとどちらに転ぼうと目先の儲けを得ることしか考えていないので、そんなものに惑わされるなど愚の骨頂である。
しかも、日本の株式市場は、アベノミクスのせいで、日銀がETF(上場投資信託)を買い漁り、簿価36兆円、時価52兆円を抱える国内株式の最大保有者に成り上がった。日銀が5%以上を保有する有力株主の1部上場企業は何と395社に上る。もちろん東証第1部全体の時価総額は660兆円で、日銀のシェアは10分の1にも満たないが、それが“国家意思”として一角を占めていることによって、この国の株式市場は半ば政府・日銀が支配する(中国も顔負けの)国家資本主義体制下にある。そこでは市場の変動が何か意味のある示唆を与えることなどあ
るはずがないというのに、石破はそこがまるで分かっていない。
脱アベノミクスのためには、株式のみならず国債、為替の3大資本市場を国家が管理しようとする異常な「国家資本主義体制」をどのように解体するのかという緻密な計画が必要になるはずで、石破と植田和男日銀総裁選がそこを誤れば3大市場が一遍に混乱に陥るだろう。
以上、私の言う「安倍政治からの脱却」3本柱の(1)と(2)についての補足。(3)安全保障=アジア版NATO構想の危うさについてはNo.1280で基本的なことは述べているので、今後必要に応じて補足することにする。
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(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2024年10月21日号より一部抜粋・文中敬称略。続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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