日本の「最低賃金1500円」には経団連の思惑が
(2024年10月8日号より)
経団連の十倉会長は10月2日に記者会見し、石破茂首相が就任会見で「最低賃金の全国平均1500円への引き上げ前倒し」を行うことを評価しました。
岸田前総理が掲げた2030年代半ばまでという目標を大幅に前倒しして、20年代の実現を目指す考えを示した石破氏を支持するのだそうです。
同時に、これは「かなりの(引き上げ)率になる」ので、「セーフティーネット(安全網)が整わないままだと大きな混乱になる」と述べたそうです。
この発言ですが、かなり根深い疑問を感じます。
1つは、そもそも労働コストは抑制したいはずの財界が、どうして最低賃金の引き上げを歓迎しているのかということです。それは、国民の所得がアップすれば購買力が高まるからですが、その恩恵は主として財界を構成する大企業が受けることになるからです。
2つ目は、その財界を構成する大企業は、空洞化した国内ではなくグローバル経済にリンクしているので、時給1500円は「悠々支払う能力がある」からです。ドル円が150円前後の時代になった以上は、「時給10ドル」ぐらいは、自分たちとしては痛くも痒(かゆ)くもないというわけです。
3つ目は、財界としては困らないものの、全国の中小企業や地方経済は「時給1500円」が払えずに混乱するだろうと言っているわけです。「混乱」というのはこれを前提としています。
その上で、大量失業が出ないように「国が面倒を見て欲しい」というわけです。例えばですが、時給1500円ではコスト高になる中で、大企業の下請けが納入価格に転嫁してくるとことは想定していないのです。
どうせ財界としては、そうなったら「英語ができず、単純反復作業の正確性だけがウリの日本の労働力」は切り捨てて、「1500円はコスパが悪い」として、より一層の空洞化を進めるでしょう。
そうなれば、中小企業や地方は困ってしまうわけです。そこで社会が混乱しないように補助金をバラまいて欲しいし、自分たちはアッカンベーというわけです。
これを悪意と言わずして何だというのでしょう。