「いつでも核を落とせる」プーチンが核弾頭搭載可能の弾道ミサイル発射で尽きかける全世界とウクライナの命運

 

アメリカ政府の方針転換に不安と疑念を抱く各国の首脳

G20に集った各国の首脳、特に議長国ブラジルを含むグローバスサウスの国々は、「これはロシアを激怒させ、ウクライナの恨みと憎しみに根差した攻撃心に火をつけて、もう国際社会が手を付けることが出来ないような地獄に、この紛争をエスカレーションさせる可能性が高まった。なんと無責任な」という反応を、口には出さずとも(出している国もありますが)、示しているようです。

またG20の先進国メンバーも挙ってアメリカ政府の方針転換に対して不安と疑念を抱いているようで、バイデン大統領からアメリカの方針に追随するように求められたにもかかわらず、即答できる首脳はおらず、国内の権力基盤の著しい弱体化を受けて発言力が低下しているドイツのショルツ首相も、「これ以上ウクライナに首を突っ込むのではなく、ロシアとの関係改善にも努めるべき」というドイツ国内の声に縛られ、かつフランス経済の立て直し失敗でフランス国内において政治的危機に瀕していると言われているマクロン大統領もすぐに対応できない状況が明らかになってきています。

その一方で、欧州各国はウクライナから距離を置き、代わりにロシアとの関係改善に努め、対話のチャンネルを再開すべきという意見が高まり、今週に入って首脳レベルの対話が再開されるという動きが活発化しています。

例えばドイツのショルツ首相は今週、およそ2年ぶりにプーチン大統領と電話会談を行っていますし、フランスのマクロン大統領も近々対話を行う見込みとのことです。

そしてこれまでの会議ではロシア非難が欧米グループから出て、ロシアの発言時にボイコットするなどの動きがでていたG20では(今年の議長国はブラジル)、各国の首脳・閣僚が、ロシア代表として参加していたラブロフ外相と相次いで会談するなど、これまでと潮目が変わってきているように思われます。

アメリカの方針に追従したのは、特にトランプ次期大統領とのパイプを持たない英国のスターマー首相くらいで、政府としての公表はしていないものの、英国とフランスが共同開発した長距離巡航ミサイルストームシャドーのロシア領内への攻撃への使用を許可した模様です。

ウクライナとしては喉から手が出るほど欲しかった承認を得て、早速、米国の陸軍戦術ミサイルシステムATACMSをロシア西部(ロシア・ブリャンスク州)の弾薬庫に向けて8発発射し、うち2発はロシアに迎撃されたものの、6発が命中し、ロシアのクルスク州奪還のための弾薬補給線に被害を与えたと言われています。

また20日には英国が供与したストームシャドーが用いられ、ロシア軍の弾薬庫を破壊したと言われています。これに対して英国政府は公式に認めていませんが、複数の情報筋がストームシャドーの投入を認め、確認しています。

国際社会にさらなるショックを与えた米国の対人地雷供与

これに加え、20日にはバイデン大統領が近いうちにウクライナに対人地雷を供与することが発表され(オースティン国防長官も発表)、「人口密集地近くでの使用をせず、あくまでもロシア軍の進軍を止めるという目的のみに使用されることをウクライナと確約済み」という条件ではあるものの、国際社会にさらなるショックを与えています。

現在、国際社会においては1996年のオタワ条約を通じて、対人地雷の撤廃に努めており、カンボジアはもとより、旧ユーゴスラビア、アフリカ大陸などでもその撤去のために力がそそがれている際に、アメリカによる対人地雷の供与は、その動きに逆行するものですし、何よりもそのアメリカのバイデン政権が、ロシアがウクライナ領内で陥落させた集落に対人地雷を敷設していることに対して激しい怒りと非難を表明していたにもかかわらず、今度は自らが同じことを行うとは許しがたい矛盾を示していると感じます。

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