「いつでも核を落とせる」プーチンが核弾頭搭載可能の弾道ミサイル発射で尽きかける全世界とウクライナの命運

 

すでに対ロ戦争の準備を始めたフィンランドとスウェーデン

さらにここにきて国内でのプーチン大統領に対する支持率が極めて高いことと、“ウクライナで行っている戦争”への支持率も高いこと、さらには、今回のバイデン大統領の変心の理由の一つに挙げられている北朝鮮軍兵士の実戦参加により、ロシア人に対する臨時徴兵の必要性が弱まったとの認識が高まることで、ロシア国民の中で再度、この戦争が自分事ではなくなってくる現象が現れることになると、ロシアによる攻撃のエスカレーションへの障壁はかなり下がると思われ、核兵器使用を含む、思い切った作戦が実施される可能性は否定できないと考えます。

ただし、紛争のエスカレーションが起きた場合、直接的に影響を受けるのはロシアとウクライナに近い東欧諸国とバルト三国であり、かつ地続きでロシアの脅威が襲ってくるEU諸国、特に北欧諸国です。

すでにこれらの国々では、来る戦争に向けて臨戦態勢に入ったという情報が入ってきていますし、新しくNATOに加盟したフィンランドとスウェーデンも、日本ではなぜか報じられませんが、今回の米英の方針転換を受けて、ロシアが必ず攻勢を強めてくると予想し、戦争の準備を始め、国民に生活必需品の十分な備蓄を急ぎ行うように呼び掛け、かなり緊迫感が強まっています(余談ですが、ちなみに私の両国への訪問予定はまだそのままなのですが)。

ドイツ政府は与党の連立が事実上瓦解したことで、ショルツ首相は来年2月に総選挙を迎え、恐らくこのままでは下野すると言われているため、すでにドイツの安全保障・防衛関連の方針を示しても、連邦議会での支持が集まらない状況であり、政権は“ウクライナへの支援”を口にしつつも、ロシアとの緊張をこれ以上高めることはできないという方針転換を強いられています。つまりロシアへの歩み寄りをじわじわとスタートしています。

その証に今週、2年ぶりにショルツ首相とプーチン大統領が電話会談をし、事態のこれ以上の緊迫化を協力して防ぐべきとの合意をし、関係改善に乗り出しています。

ドイツの防衛政策の専門家曰く、政府の今後の方針として「すでに供与したレオパルトII戦車は諦めるとして、ウクライナが求めるタウルスミサイルの供与は行わず、徐々にドイツはウクライナから手を退くことになるだろう」とのことで、例えは悪いですが、我先に危ないところからは退避し、ロシアから攻められるような事態にはならないようにしようという姿勢が垣間見られるようになりました。

フランスについては、マクロン大統領自身はロシア・ウクライナ戦争において目立つ役割を担いたいと望んでいるようですが、国内で極右政党の影響力が増大し、そこにフランス経済のスランプにマクロン政権が何ら策を講じていないという非難が重なり、今、積極的に外交的な手段に打って出づらい環境が作り上げられています。

「マクロン大統領が、特にフランス国民の福祉に関係がないウクライナ問題に時間とお金を使っている間、フランス国民は窮状に瀕している」とFN(国民戦線)あたりから攻撃され、その認識が国民、特に労働者層の支持を集めていることもあり、外交よりもFrance Firstにすべきとの圧力がかかっているため、フランスはこれ以上のウクライナ支援には動くことができない状況のようです。

またドイツ同様、トランプ次期大統領登場後、アメリカが再び欧州と距離を置くことを想定し、「ロシアとの緊張関係を解くことこそが、欧州にとっての安全保障を確保する道」との認識を強めているようで(もともとの提唱者でもありますし)、水面下でロシアとの関係改善の機会を探っているようです。

ショルツ首相と同じく電話会談に臨むのか、2022年のロシアによるウクライナ侵攻前まで行っていたモスクワ(クレムリン)訪問を強行するのかは分かりませんが、今はNATOやアメリカとの結束を維持するよりも、フランスおよび欧州独自の安全保障体制の強化、そしてロシアによる脅威の軽減に重点を移しているように見えます。

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