これから2か月の間に試されかねない非常に危険な火遊び
トランプ政権が誕生し、アメリカ政府が対ウクライナ支援を大幅にカットするか撤廃することが予想され、加えて長距離砲の使用許可も取り消す決定を行うでしょうから、恐らくそれに英国政府も追随すると考えると、ウクライナとゼレンスキー大統領の命運も尽きたかと悲観的になりますが、NATOや米英の意思に関わらず、ロシア領内を攻撃できる無人ドローン兵器などのウクライナ国内での開発・生産・配備が進んでおり、今後、その実戦配備の予定が早まるようなことがあれば、この戦争が思いのほか、長引くだけでなく、トランプ大統領の意思に反して、ウクライナのゼレンスキー大統領は抗戦を続けることを選ぶようになるかもしれません。
そうなると戦争は続きますが、その場合、トランプ大統領はアメリカのサポートを引っ込め、結果としてNATOがロシア・ウクライナ戦争から手を退く形になると、実はロシアにとってもあまりいい環境ではなくなることになります。
今回の“特別軍事作戦”の理由として、「ウクライナという駒を使って、NATOがロシアの国家安全保障を脅かそうとしているので、それに徹底的に反抗するのだ」という主張が掲げられ、真偽のほどはともかく、それで国民の支持を得ているわけですが、そのNATOのコミットメントがなくなるか、かなり低減することになると、プーチン大統領はウクライナ攻撃に対する大義を失うことになりかねず、これはまたロシアにとって難しい状況が生まれることになります。
そこに“停戦の種”があると、どうもトランプ次期大統領も、プーチン大統領も考えているように思われます。
バイデン政権が残りわずかな任期中に停戦を達成するべく、ウクライナに軍事的な成功をおさめさせようと躍起になり、ロシアを過剰に刺激するという危ない賭けに出たように、ロシアは核兵器使用の可能性を再度示唆したり、近々、大規模な攻撃をウクライナに対して行ったりすることで、少しでも陣地を拡大し、有利な条件を作り出そうとすると考えられます。
そしてロシア・ウクライナのタイムリミットが、トランプ政権が正式に誕生する来年1月です。
それまでにロシアとウクライナのどちらが、より有利な状況を作り出し、相手側に一刻も早く戦いを終えたいと思わせるかがカギと言うことになってしまいます。
非常に危険なことがこれから2か月の間に試されることが予想されますが、その火遊びが少し過ぎると、ロシアまたはベラルーシの核兵器が投入され、世界の広範囲に不可逆的な悲劇をもたらす事態に発展する危険性もはらんでいます。
それに見事に翻弄されているのが、実は中国です。
トランプ大統領の再登板により、容易に米中関係の緊張がさらに高まることが予想されますが、恐らく安全保障上の緊張は避けられるかと思います。
それはトランプ氏が実は言われているほど台湾防衛に関心がなく、台湾にコミットする理由がTSMCの存在のみと思われ、TSMC防衛の手筈が整ったら、案外あっさりと台湾については見放すことも予想されています。
ただそれを実現するためには、中国としてはアメリカと対等に渡り合えるだけの実力を備えている必要があり、それがトランプ氏の前政権時と現在の中国の状況とのおおきな違いです。
皆さんもご存じの通り、中国経済はこのところスランプに沈んでおり、再度、トランプ関税を実施されたら、中国経済が耐えられない恐れが懸念されます。
アメリカのトランプ政権と渡り合うためには、100%方針ややり方に同意できなくとも、しばらくはロシアとの協力が欠かせないとの理解で、ロシアの戦争実行には直接的に関与しない方針を貫きつつも、かといってロシアを見捨てることが出来ず、結果として中ロの結束を高めて影響力を相互に高め合っている状況です。
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