立憲民主党と大連立を組むというウルトラCの大技
そして、ここで登場するのが、現在の石破内閣の中に複数いると噂されている「スキャンダルを抱えた閣僚」へのピンポイント攻撃です。政治とカネの問題などで野党からの集中砲火を浴びても、これまでの大臣なら「今後も大臣として政策を前へ進めることでケジメとしたい」などと抜かして居座り続けて来ました。しかし、今は野党の協力がないと予算も決められない少数与党ですから、こんな方式は通用しません。
今の石破内閣の閣僚は、スキャンダルどころか失言ひとつでも辞任に追い込めますし、予算委員長が野党議員なので石破首相も答弁に立たせられます。そうなれば、野党は石破首相に任命責任を追及することができます。石破首相自身に何もスキャンダルがなくても、自身が組閣した内閣で辞任ドミノが起これば、通常国会という長い試合の中では、その任命責任というダメージが井上尚弥のボディブローのように効いて行くのです。
あたしの動物的直感では、3月末に予算が決まるまでは石破首相を利用するだけ利用し、4月に入ったら石破首相をポイ捨てして林芳正氏か茂木敏充氏に看板を掛け替えるような予感がしていますが、どちらが次の看板になったところで支持率の大きな回復など望めないことは火を見るよりも明らかでしょう。そこで、自民党の選択肢は2つに絞られます。1つは、ヤケクソで衆参ダブル選挙に打って出るという道です。そして、もう1つが、現在の自公連立の枠組みを変え、ここに野党を加えた3党連立にして、衆議院の過半数を押さえた安定政権を作るという道です。
前者の場合、去年の衆院選で議席を失った27人の裏金議員たちは、次の衆院選まで3年半も待っていられないので、衆参ダブル選挙をやってほしいと思っています。しかし、萩生田光一氏のように何とか踏みとどまった裏金議員たちは、今度こそ落選してしまうかもしれないので、衆参ダブル選挙などとんでもないと思っています。つまり、現状では自民党内のパワーバランスとして衆参ダブル選挙の可能性は極めて低いが、通常国会の流れ次第では可能性はゼロではない、というイメージです。
そして、もう1つの道である3党連立は、今の自公が国民民主党か日本維新の会を引っ張り込めば政権が安定するので、自民党としては3党連立してから参院選に臨みたいわけです。しかし、国民民主も維新も、参院選の前に連立入りすると有権者を裏切ったと反発されますから、参院選でのボロ負けは必至です。その一方で、参院選さえ終われば3年間は国政選挙がないので、国民民主や維新は連立に入りやすくなります。
この2党が連立入りを狙っているのなら、動き出すのは参院選後ということになりますし、そのためにも参院選では議席を増やしておきたいでしょう。
しかし、このどちらと3党連立を組んだとしても、この2党はあーだこーだと自民党に注文をつけて来るだろうし、自民党が言うことを聞かないと「離脱するぞ」と言って脅して来ることを自民党は分かっています。いくら安定過半数のためとは言え、こんな厄介な時限爆弾のような政党など抱え込みたくない。これが自民党の本音です。
結局のところ、衆参ダブル選挙もできない、参院選前の3党連立もできない、しかし、何か手を打たないと政権が安定しないし選挙で負けてしまう。そこで自民党内に浮上したのが、面倒くさい国民民主や維新はスルーして、一番大きな立憲民主党と大連立を組むというウルトラCの大技なのです。
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