米ロス山火事の元凶か。予想を遥かに上回る速度で進む地球温暖化で住処を奪われる人類

 

何がアメリカ史上最悪級の気象災害・ロス大火災を招いたのか

ロサンゼルスを襲った大規模な山火事は、アメリカ史上最悪級の気象災害となり、高級住宅街を含む広範囲に被害をもたらす。

火災では、パシフィック・パリセイズ火災やイートン火災を中心に複数の山火事が同時多発的に発生した。強風による炎の拡大により、1万2,000以上の建造物が焼失し、11人以上が命を落とす悲劇となる(*12)。さらに、ハリウッドの著名人の邸宅も次々と被害を受け、ビリー・クリスタル、マンディ・ムーア、パリス・ヒルトンなど多くのセレブリティが自宅を失った(*13)。

被害の拡大の背景には、カリフォルニア州が長年直面している気候変動の影響が。干ばつと異常気象が続き、森林や植生は極度に乾燥した状態となっていた。これに加え、時速160kmを超える暴風が吹き荒れたことで、火災は急速に拡大し、消火活動が困難に(*14)。

気候変動は、ロサンゼルス周辺の山火事リスクを顕著に高めている。スタンフォード大学の気候科学者ノア・ディフェンバウ博士によると、地球規模の気温上昇は南カリフォルニア地域の温暖化をさらに悪化させ、深刻な山火事の発生確率を高めているとのこと(*15)。

特に気温上昇により植生が乾燥しやすくなり、燃えやすい状態に陥っている。加えて、降雨が遅れることで乾燥期間が延び、山火事のリスクが一層高まっている(*16)。

予測を上回るスピードで進行する地球温暖化

地球温暖化は、予測を上回るスピードで進行し、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告書によると、世界の平均気温は産業革命前と比較して既に約1.09℃上昇しており、このままのペースで進めば、1.5℃の閾値を近い将来超える可能性が高いと指摘(*17)。

産業革命以降、化石燃料の大量消費により大気中のCO2濃度は40%以上増加し、現在では400ppmを超える水準に達す。この急激な濃度上昇が地球の気候システムに重大な影響を及ぼし、温暖化をさらに加速させる。

温暖化の影響は単なる気温上昇にとどまらない。特に懸念されるのは、温暖化による影響の不均衡性というもの。

例えば、労働可能時間の減少率はCO2排出量の少ない途上国でより顕著であり、気候変動がもたらす経済的・社会的な不平等を拡大させる可能性がある(*18)。さらに、北極圏では気温上昇の速度が世界平均の約2倍に達しており、地域ごとに異なる影響が現れている。

このような危機的状況に対処するためには、温室効果ガスの削減を目指す「緩和策」と、気候変動の影響に対応する「適応策」を組み合わせた包括的なアプローチが不可欠。具体的には、再生可能エネルギーの普及、森林の保全、耐性のあるインフラの整備、災害リスク管理の強化などが必要とされている。

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引用・参考文献

(*1)「【気象解説】今季最強寒波が襲来…日本海側中心に大雪 危険な雪降らせるJPCZとは」日テレNEWS 2025年1月8日

(*2)日テレNEWS 2025年1月8日

(*3)「“最強寒波”列島直撃 交通機関の乱れも 3連休は都心でも雪の可能性」テレ朝news 2025年1月11日

(*4)「【警戒】世界各地で異常気象 氷点下40℃で中国・黄河に「氷の花」 アメリカ中西部では過去10年で最悪の大雪、非常事態宣言も イギリスでは冬の洪水発生」FNNプライムオンライン 2025年1月8日

(*5)FNNプライムオンライン 2025年1月8日

(*6)FNNプライムオンライン 2025年1月8日

(*7)FNNプライムオンライン 2025年1月8日

(*8)日テレNEWS 2025年1月8日

(*9)田中博・海野友美「北極温暖化増幅と北極振動の関係」筑波大学計算科学研究センター

(*10)「米東部に冬の嵐襲来 十数州で降雪暴風警報出され6000万人影響か」REUTERS 2025年1月6日

(*11)「死者も続出する異常気象、世界で相次ぐ猛烈な熱波・寒波と温暖化の関係」HATCH編集部 2021年11月4日

(*12)「Families in shock begin to visit their charred homes in the Los Angeles area」AP 2025年1月12日

(*13)「Jamie Lee Curtis pledges $1M to relief effort as many, including stars, lose homes in LA fires」AP 2025年1月12日

(*14)「Strong winds pick up, increasing fire danger as firefighters battle LA blazes」npr 2025年1月12日

(*15)「Here’s the role climate change may be playing in deadly SoCal wildfires, experts say」abc 2025年1月12日

(*16)木村正人「灼熱地獄が出現する ロサンゼルスで猛火 気温上昇は産業革命前の1.5度を上回る」Yahoo!ニュース 2025年1月10日

(*17)「24年平均気温、産業革命以前から初の1.5度超上昇=EU機関」REUTERS 2025年1月11日

(*18)地球環境研究センター 気候変動リスク評価研究室長 塩竈秀夫社会環境システム研究センター 広域影響・対策モデル研究室 研究員 高倉潤也社会環境システム研究センター 広域影響・対策モデル研究室長 高橋潔地球環境研究センター 副センター長 江守正多「【最近の研究成果】パリ協定の1.5°C目標を達成することで、気候変動の「不公平性」は軽減できる」地球環境研究センターニュース

(『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』2025年1月12日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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