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概して落ち着いていて穏やかなものだった中国の反応

前述したように中国は対米輸出品に10%の関税が上乗せされることに反発。即座に対抗措置を打ち出した。

その内訳は、まずアメリカ産の石炭及び液化天然ガスに対して15%。原油や農業用機械、大排気量の自動車への10%の関税を追加で課し、世界貿易機関(WTO)へ提訴。さらに、ハイテク製品の製造に欠かせないレアメタルのタングステン、トリリウム、モリブデン、インジウム、ビスマスなど25品目を輸出規制するとしたのだ。

これに加えて新疆ウイグル産綿花をボイコットしたPVHとイルミナを信用できない企業リストに追加。国家市場監督管理総局はグーグルを独占禁止法違反の疑いで調査すると発表したのだ。

信用できない企業リストに加えられると中国でのビジネスは大きく制限される。

中国が1時間もしないうちに対抗措置を発動したことも話題となった。

だが、中国の反応は概して落ち着いていて穏やかなものだった。そのことは米中の関税戦争の幕開けを報じたメディアのタイトルにも表れている。

例えば、BBCは記事「【解説】中国とアメリカは貿易戦争の激化を避けられるのか 『トランプ関税」』に対抗」のなかで、「中国は対抗措置を発表したものの、聞く耳をもち、話し合いには応じる姿勢でいることがうかがえる」と評している。

また米『ブルームバーグ』も、記事「中国が対米関税で見せた慎重さ、苦しい事情反映‐10日までの合意焦点」のなかで「中国の習近平国家主席が第1次トランプ政権時代よりも慎重な姿勢で臨んでいることを浮き彫りにした」と書いている。

また『ブルームバーグ』は、中国が慎重であることの理由として、「第1次トランプ政権以降、中国が輸入先の多様化に成功したこと、および中国経済が一段と厳しくなっていることの双方を反映している」からだと解説している。

事実、中国の報道官も「圧力と脅しは中国には通用しない」と強い言葉で応じながらも、「中国は米国に対し、誤ったやり方を正し、平等な協議を通じて各々の懸念を解決し、中米関係の安定した健全で持続可能な発展を推進するよう促す」と協力をベースにしていることを強調している。

関税発動前の1月末には別の報道官が「中米間には食い違いや摩擦があるが、両国の共通利益と協力の余地は極めて大きい。双方はこの点について対話と協議を強化することができる」と呼び掛けている。

中国が第1次トランプ政権の時とは違う反応を示していることの裏には、ブルームバーグが指摘するような貿易の多様化の成功や関税の負担が最終的にはアメリカの消費者に向かうということを学んだ点が大きい。しかし、それだけではない――(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2025年2月16日号より。続きをお読みになりたい方は、この機会に初月無料のお試し購読をご登録ください)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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