先日掲載の記事で、男子生徒を自死に追い込んだ「大阪清風高校」のあまりに異常と言わざるを得ない指導と、同校が日常的に人権侵害を繰り返す組織である事実をリークした、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さん。阿部さんはその続報として自身のメルマガ『伝説の探偵』で今回、大阪清風高校がこの指導死事件の調査のため設置した第三者委員会の明らかな問題点や、信じ難い遺族への対応について伝えています。
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※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:大阪清風高校指導死事件の続報
第三者委員会にも大問題。「大阪清風高校」指導死の闇
2024年末に記事にした「大阪清風高校の指導死事件」についての続報(第二弾)。
前回(伝説の探偵「生徒の髪を切り携帯も解約。行き過ぎた指導で生徒を自死へと追い込んだ『大阪清風高校』という隠ぺい組織」)でお伝えいた通り、生徒がカンニングをしたことばかりが報じられているが、そこまで生徒自身が追い詰められていたことやその指導と処分があまりにも厳しく、別件ではあるものの弁護士会が人権侵害をしている学校だとしているなど、環境的にも問題があったことを述べた。
今回はこの件の調べにあたった「第三者委員会」の問題についてだ。
校長兼理事長の「お友達」だった第三者委員会の委員長
学校が設置した第三者委員会は、カンニングが起きた倫理政経の授業の問題点を指摘し心理的に追い詰められていたことを認めている。自死した男子生徒が「周りから卑怯者と思われながら生きていく方が怖い」と遺書に書いたことを、心理的視野狭窄から「この苦痛を終わらせるには自殺するしかない」と確信に至る心の流れは理解できると明言している。
指導の酷さや行為と罰についてあまりに罰が重く、十二分に反省している男子生徒をこれでもかと追い詰めていく様子を調べ、これを認めている。
ところが、報告書文末に近付くと、一般論を展開し、同様の行為をした生徒が同様に罰を受けても自死していないから、指導と自死は一定の影響があるが認められないとしている。
一般に、第三者委員会というものは、問題の一般論ではなく、個別事件について専門的な見地で調査を行い分析する。その際に個別事案としての再発防止策や事件が起きる過程の中で、問題が起きる岐路となる部分を抽出し、仕組みとして未然防止する策などを提案するなどするものである。
つまり、この事件の第三者委員会調べと報告は、個別事案として当初は調べ、各章各節、個別事案の調査と分析を行い、環境の酷さや指導の拙さと指摘し、自死との因果関係を認めているのに、なぜか、最後は突如一般論を持ち出し、本件とは無関係な他の生徒の事例を持ち出して、因果関係を否定するという暴論で終わっている。
そもそも遺書の実物には、「死ぬという恐怖より、周りから(学校内から)卑怯者と思われながら、生きていく方が怖くなってきました」と書いてあり、家族については感謝の言葉しかないし、「励ましてくれてありがとう」とも書いてある。わざわざ、「学校内」とカッコ書きした心情については、報告書では特に言及しておらず、なぜか家庭も含めて環境的なところも要因となっており、十分な説明がなされていないのである。
ご遺族によると、特に「家庭の問題(要因)」に心当たりが無く、遺書にも記載が無い。また、第三者委員会から家庭の問題を検討する様なヒアリング調査も受けていないという。そのため、遺族は、学校側にこの委員会の調査について多数の問題点を書面で指摘したが、学校側からは、委員会は適切に調査をしたと書面で回答されているのである。
さらに、第三者委員会の委員長は、自身が理事長を務める学校に、調査対象となっている清風学園の校長兼理事長を何度も招いてセミナー講師を依頼しているという関係である。
つまり、第三者ではなく、お友達が第三者委員会の委員長という身内委員会が行われていたと言われても苦しい言い訳しかできない状況なのである。
こうした問題は私学ではよくあることで、第三者委員会を開くと言っても、実は第三者ではない利害関係がバッチリある顧問弁護士に専門家召集を頼んでいたり、委員長を頼もうとしたりする。
こうした場合、どんなに公正な調査をしたとしても、委員長は議事をまとめたり、他の委員よりも一般に強い権限を有するわけだから、第三者性が皆無で利害関係があるとなると、中立公正が担保できないと判断されることになる。
私はよくいじめの第三者委員会の構成に関わるし、委員経験もある。企業での横領問題や内部不正についての調査を引き受けることもあるが、こうした経験に基づくと、特に第三者委員は、調査対象との利害関係が無いことは全ての大前提であり、何よりも重要視するのは、実績ではなく、中立公正な立場の担保である。
当然だ。関係者が委員になってしまえば、泥棒が警察を選ぶのと同じになってしまうという不正が不正を生む構造ができてしまうからだ。
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