時の政権の政策や方針により変わるこの国の司法判断
…というわけで、3月11日を目前に控えた3月5日、同じ日に原発に関する2つの裁判の判決があり、あたしは恐ろしい事実を知ったのです。それは、この日本という国は「三権分立」が機能しておらず、司法の判断が時の政権の方針によって左右されるという事実です。
その証拠に、原発事故によって福島から千葉に避難した住民らが国と東電に損害賠償を求めた集団訴訟では、2021年2月19日、東京高裁は国と東電の責任を認め、住民43人に計約2億8,000万円を支払うよう命じたのです。この判決について、当時の東京高裁は次のように根拠を述べました。
「2002年7月に政府の地震調査研究推進本部が公表した長期評価に基づけば、国は原発の敷地の高さを大きく超える津波を予見でき、公表から遅くとも1年後には東電に事故を避ける措置を命じられた。そこから東日本大震災が起こるまでの約7年半で、防潮堤の設置や重要機器室の防水対策は可能であり、全電源喪失という結果は避けられた」
今回の最高裁の判断とは真逆ですが、普通に考えたら小学生でも分かる当たり前の判断です。そして、どうして東京高裁がこのような正しい判断をすることができたのかというと、当時は政府の「エネルギー基本計画」に「可能な限り(原発の)依存度を低減する」という文言が明記されていた上、現在のように「(原発を)最大限活用する」などとは間違っても書かれていなかったからです。つまり、この国の司法判断は、時の政権の政策や方針によって180度変わってしまうのです。
安倍晋三元首相は、日本の三権分立を破壊して、司法、立法、行政という国家権力のすべてを牛耳ろうと画策しましたが、他の数々の公約と同様に、この悪だくみも「道半ば」で終わりました。しかし今回、最高裁という司法のトップまでもが自民党政権の方針におもねった判決を下すという異常な状況から「安倍政治の負の遺産」は格差拡大と物価高騰だけではなかったのだと知りました。そして、安倍元首相が目指していた「美しい国」とは「誰も責任を取らない国」のことだったのだと知ったのです。
(『きっこのメルマガ』2025年3月12日号より一部抜粋・文中敬称略)
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