米国の“無敵の人々”が起こした株暴落とトランプショックの裏。相互関税に2つの支持グループ、その主張・心理・怨念とは?

 

(2)自分の名誉を傷つけられたと感じている元製造業の人たち

そして実は、トランプ支持者で、製造業回帰を強く望んでいるグループには、もう一つ全く別の層があります。それは、元製造業労働者で、今はリタイアして年金で生活している層です。例えば、オハイオ州のクリーブランドで、電機メーカーの工場で勤め上げて、今は引退して年金で生計を立てているとします。

そうした人々は、自分がかつて「人生を捧げてきた」アメリカの製造業が影も形もなくなっていることに、「自分の名誉が傷つけられた」という感覚を持つのです。この辺が、日本の感覚と異なっていて、日本の場合は経済の全体が縮小しているので、製造業がなくなっても「とにかく自分が食べられれば満足」「自分が生活を維持するのに必死」ということになります。

ところがアメリカの場合は、シリコンバレーやウォール街は依然としてグローバル経済の恩恵で活況なわけです。そうした明るい部分と比較すると、「かつて自分が活躍し、人生を捧げた」製造業が消滅しているのは、見るに堪えないし、怒りを覚えるということになります。

つまり、全く異なる2つのグループがトランプの「製造業回帰」政策を強く支持しているというわけです。

アメリカでは知的産業だけが威張っているので、サービス業という屈辱的な仕事しかない自分には居場所がないという現役世代がいます。そして、かつて自分が活躍した製造業が消滅したことに、自分自身が否定されたような痛みを感じる、そんな引退世代がいる。この2つです。

相互関税を支持する2つのグループは“無敵”状態にある

ですが、とにかくこんな激しい関税政策を実行して、相互に傷つけあっては世界経済もアメリカ経済も無茶苦茶になります。だからこそ、株価が暴落しているのですが、ではこの2つのグループはどうして「副作用」を無視できるのかというと、実はこの2つのグループは無敵なのです。

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