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参院選 衝撃の自公惨敗シナリオ「進次郎と2万円」まさかの敗因に?1人区に漂う不穏な空気、石破首相退陣・政権交代も視野

第27回参院選は3日公示され、7月20日の投開票に向けた選挙戦がスタートした。だが与党側につい先日までの楽観ムードはない。消費税減税の是非やコメを始めとする物価高対策が争点となる中、秘策だったはずの“備蓄米パフォーマンス”や“2万円バラマキ”が、むしろ「敗因」となる可能性が生じている。元全国紙社会部記者の新 恭氏が詳しく解説する。(メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:進次郎劇場は思惑外れ。参院でも自公過半数割れか

小泉進次郎劇場、まさかの閑古鳥

参議院選がスタートした。投票日は7月20日。なにも3連休のど真ん中をあてることはないだろうと思うが、どうやら無党派層の投票意欲を削ぎたいらしい。石破政権はそれほど自信を失っているのだろうか。

東京都議選の前まで、石破官邸と自民党内にはさしたる根拠もなく楽観論が充満していた。“進次郎パフォーマンス”で悦に入っていたからだ。

自民党を見る世間の空気感が変わり、都議選や参院選に明るい光が差し込んできたはずだった。事実、都議選の最終盤になっても、自民党やマスメディアの情勢調査結果は自公優勢の数字を示していたのだ。

しかし、そんな空気は都議選の開票とともに、一瞬にして吹き飛んだ。自民の当選者はわずか18人。あわてて3人を追加公認し21人となったものの、状況判断の甘さは隠しようがない。

「備蓄米パフォーマンス」を有権者は評価せず

裏金問題が尾を引き、たまたま同じ知事与党の一角である「都民ファーストの会」に自民支持層の票が流れただけ。都ファの候補者が出ない参院選は大丈夫という見方は、いささか甘すぎるだろう。

問題はかなり深刻だ。あれだけマスコミが進次郎人気を煽ってくれたにもかかわらず、有権者の投票行動にほとんど影響を及ぼさなかったのである。これをどう解釈するべきか。

都議選開票の翌日、小泉大臣はその結果などどこ吹く風で、記者団に怪気炎を上げていた。

「石破総理大臣が今まで、6月中旬までに平均3000円台と話をしてきたことを多くの皆さんの協力で達成でき、大変ありがたく受け止めている。コメ高騰の沈静化に新たな段階に一歩踏み込めた」

この日、6月9日から15日までの1週間に全国のスーパー約1000店で販売されたコメの平均価格が発表された。5キロあたり税込みで3920円。前の週から256円の値下がりだ。「ブレンド米」は3495円、「銘柄米」は4338円という平均販売価格だった。誇らしげに小泉大臣が語るほど成果が上がっているといえるだろうか。なにより都議選の結果に有権者の評価が示されている。

そもそも、古古米や古古古米などが安いのはあたりまえだ。コメ高騰以前は銘柄米でも5キロ2000円前後で買えていたわけで、冷静な人の目には、“進次郎パフォーマンス”を使った参院選対策と映るのが自然だろう。

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逆効果だった石破自民の2万円バラマキ策

もう一つ重要なポイントがある。野党の減税要求を拒みながら選挙直前になって2万円のバラマキ策を打ち上げる石破政権のご都合主義に、国民がほとほと呆れかえり、うんざりしている。

そのために国民の間に冷めた批判的精神が維持され、“進次郎効果”にごまかされまいとする意識が広がっているのではないだろうか。(次ページに続く)

今のムードは完全に「政権交代前夜」自民党内に衝撃

さて、その参院選。石破首相は勝敗ラインを「与党で50議席」としている。

非改選の議席は自公で75議席あり、今回の選挙で「50」を取れば、参院(定数248)の過半数(125議席)をなんとか維持できるからだろうが、本来ならボロ負けの数字である。

つまり、“実質的”な大敗北を覚悟しているからこそ、数字上の目標ラインを大きく引き下げ、政権の延命をはかろうとしているのだ。

5月10~11日に行われた自民党の情勢調査では、都議選で40議席近く、参院選では自民党だけで49議席をとれると見込まれていた。その後の5月21日、小泉進次郎農水大臣が華々しく登場したことから、党本部はさらに強気になり、あわよくば自公で60議席を越えるという見方まで出てきていた。

ところが、都議選を境にムードは一転。いまや「与党で50議席」を割ることはないのかと問われて「絶対に大丈夫」と言い切れる政治家は自民党の中にいないだろう。

なにしろ、公明党の組織力が年々低下し、都議選では全員当選どころか3人が落選した。前回参院選は14議席だったが、今回はとても同じようにはいかない。もし10議席どまりなら、自民は40議席とらなければならない。

それができなければ、石破首相の退陣は不可避だろうし、政権交代の可能性さえ出てくる。

思い出されるのが2007年、第一次安倍政権下における参院選だ。「消えた年金」問題や閣僚の不祥事が相次いだことが災いして、自民党は獲得議席数37(選挙区23、比例区14)という歴史的大敗を喫した。とりわけ全国で29あった1人区では群馬、福井、和歌山、山口、大分、鹿児島の6選挙区で勝利したものの、他の23選挙区が総崩れとなった。

これにより参院で与党の議席数が過半数を下回り、衆参ねじれ国会となって国会運営が難航。2009年の政権交代につながったことは周知の通りだ。(次ページに続く)

進む野党共闘と保守分裂。1人区次第で自公惨敗の可能性も

今回も、農村地帯をかかえる32の1人区での勝敗が帰趨を決めるだろう。

そのうち、自民の劣勢が伝えられるのは野党系に有力な現職の候補者が存在する岩手、宮城、秋田、山形、長野、愛媛。激しく競り合っているとされるのは青森、福島、新潟、山梨、三重、徳島高知、香川、長崎、大分、鹿児島、沖縄だ。

以上の17選挙区は勝敗がどちらに転んでも不思議ではない状況。なかでも福島は、共産が候補者擁立を取り下げ、立憲・共産の野党共闘が成立。現職の森まさこ氏(元法相)は苦しい状況となっている。

鹿児島も、共産が独自候補の擁立を見送り、立憲推薦の無所属候補に一本化することが決まった。長崎は、国民民主党が擁立した新人候補(元県議)を立憲が支援する構図で、自民の古賀友一郎氏(経産副大臣)を脅かしている。

このほか、自公優勢と言われる栃木、群馬、富山、石川、福井、岐阜、滋賀、奈良、和歌山、鳥取島根、岡山、山口、佐賀、熊本、宮崎も安閑としてはいられない。現に、和歌山と岐阜では、立憲と維新が“予備選”(情勢調査)をもとに候補者一本化で合意した。滋賀も立憲が擁立をあきらめ、国民の候補に一本化した。

国会ではいがみ合っているように見える野党陣営も、いざとなると現実的な融通をきかせあうものらしい。

そうなると苦しいのは自公側だ。とくに、農村部では、コメを安く売ろうとする“新小泉劇場”への反発が強いといわれる。政権浮揚のために進次郎人気をあてこんだ石破首相や自民党執行部としては、思惑外れの状況だろう。

国民民主党や参政党、日本保守党などの新興勢力へ保守票が分散し、2007年参院選より自公への逆風が強いとも言われる今回の選挙。衆院に続き参院まで与党が過半数を割るようなことになるのかどうか。この国の政治が歴史的な分水嶺にさしかかっているのは間違いない。

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