障害者雇用施設に大きなヒント。AI時代の社会保障のあるべき姿とは?
私のゴルフ友達の一人、ジョンには、ダウン症の息子さんがおり、すでに成人しているその息子さんは、ある施設に預けられていることだけは知っていました。
私は、いわゆる「障害者用の施設」を想像していたのですが、先週、ジョンと食事をした時に、詳しく話を聞いたところ、想像とはまったく違うものでした。
その施設は、もともと、ジョンを含めた障害者を家族に持つ3人が、彼らのために作った施設だそうです。ワシントン州の田舎の古い農場を買い取り、そこに雇った管理人と成人した障害者3人が暮らし、家畜や野菜を育てて生計を立てるところから始まったそうです。
目的は、ジョンたち家族が歳をとってこの世からいなくなっても、彼らが衣食住に困らずに生きていける環境を作ることだそうです。それを可能にするために、農場を買い取るお金と、運営を補助するための資金を提供するトラスト(信託)の設置までは家族が行ったそうですが、基本的には、自分たちで食べるものは自分たちで育て、残りを外販することにより、自立して運営できるように設計したそうです。
今では、参加者も増え、10人を超える障害者を抱える施設に成長したそうですが、基本方針は変わらないそうです。
この仕組みの素晴らしさは、
- 国や州の補助金などに頼らずに作られているため、政局の変化に振り回されることがない
- 家族からの支えがなくなっても障害者たちが一生暮らして行ける場を提供できる
- 障害者たちに働く環境を与えている
という点にありますが、特に重要なのは3つ目です。
障害者たちを社会全体として保護することは大切とはいえ、「社会のお荷物」的に扱ってしまっては、彼らの尊厳に関わります。この施設は、「障害者を世話する場所」ではなく、「障害者たちがコミュニティの一員として働いて貢献する場所」を作っているところに大きな意味があるのです。
まだ考えがまとまったわけではないのですが、私はこの話に、AI時代の社会保障のあり方のヒントが隠されているように思えます。(次ページに続く)
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