「オオカミ少年」と化したトランプ。米国の“コロコロ変わる脅し”に焦る国が激減、ほくそ笑むプーチンと習近平

 

トランプの脅しを本気には捉えていないプーチンと習近平

中東問題が複雑化することは、下手すると世界戦争に繋がりかねない発火点になる危険性があるものの、台湾情勢で中国を狙い、ウクライナ問題でロシアを狙うアメリカおよびその仲間たちのコミットメントを自国案件から引きはがすために、アメリカや欧州が中東問題に関わろうとする度合いが高いほど、同じかそれ以上の強度で中東案件に関与して注意をそちらに惹きつけ、さらに欧米諸国とその仲間たちの力とリソースをそちらに振り向けさせる戦略を取っています。

この戦略は、いろいろな見方が出来るかと思いますが、これまでのところ奏功しているように見えます。

このところトランプ氏の“過去の”発言がクローズアップされていますが、支持者向けの演説の中で「これ以上、ウクライナへの苛烈な攻撃を加えるならモスクワへの攻撃も辞さない」とか「中国が武力で台湾侵攻を強行するなら、北京を爆撃する」といった過激な発言が目立ちますが、両国は“アメリカの脅しは実行されない”と確信していますし、再三出てくる「ロシアに対する制裁強化はいつでもテーブルの上に乗っている」という“脅し”も、実際にはまだ議会での議論が行われる前の段階であるため、どちらの国(リーダー)も本気に捉えていません。

現在進行形のロシア・ウクライナ戦争に関連して、いつまでたってもプーチン大統領が自分の思うとおりに動いてくれないことに苛立ち、圧力をかける目的で、一度は停止を命じたはずの「ウクライナへの防衛兵器の供与を再起動する」ことが持ち出されていますが、こちらも“パトリオットミサイル10基”程度の規模であり、それが実際の米国防衛のためのキャパシティーと、より重点を置いているイスラエル防衛のための供与との天秤で、実現の可否ははっきりしていないと聞いています。

ペスコフ大統領府報道官の余裕のコメントを聞いても、ロシアはまだ全然焦る状況には追いやられていない様子が分かりますし、中国もトランプ氏の圧力を本気に捉えない姿勢を示しています。

トランプ大統領の“外交戦略”が脅しと前言撤回の連続であることを見破った国際社会は、トランプ氏が矢継ぎ早に出してくる激しい方針にはもう一喜一憂せず、圧力に屈することもなく、じっくりと交渉に臨む姿勢を示しています。

その背景には、それぞれの国々がグローバルサウスという形だったり、並み居る経済国だったりして、実力をつけており、アメリカ一辺倒ではなく、貿易も外交的なパートナーシップも多角化して、自国の立ち位置を確立してきている現実が存在するため、これまでのように「不条理だと感じてもアメリカについていくしかない状況」から、「不条理かつ非常に失礼な態度を取るのであれば、アメリカから離反し、他の大国とパートナーシップを強化して、複数の足でしっかりと立つことができる体制構築」という方針に変わっていると分析しています。

その顕著な例がアジア各国と一部の欧州諸国であり、中国は言うまでもなく、グローバルサウスの雄であるインドやインドネシアも、ラテンアメリカ諸国の雄であるブラジルも、巧みにアメリカ離れを加速させています。

その例はロシアによるウクライナ侵攻の際、バイデン政権が音頭を取って反ロシア包囲網を構築し、そこにアジア・ラテンアメリカ諸国の参加を要請した際に、ことごとくNOをつきつけられたことからも明らかで、それはトランプ氏が返り咲いた後も覆ることがないトレンドとして定着しています。

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