「台湾有事は日本有事」というバカ話に踊らされる人々。根拠なき憶測をタレ流す日本メディアと自称専門家が堕ちる地獄

 

何よりも重要な「台湾有事」を起こさせない外交努力

本誌が繰り返し主張してきたように、「台湾有事は日本有事」ではない。

台湾有事が仮に起きたとして、それは中国の内戦であり、誰にせよそれに軍事力を以て介入すれば国際法上、「侵略」になる。しかも、米中は共に相手に向かって大陸間弾道弾を突きつけあっている核保有国同士であり、局地的な戦争どころか偶発的な衝突でさえも世界を破滅させる核戦争に繋がりかねないリスクを予め確実に除去して戦争を始めることは不可能である。

その二重の理由によって米国は、台湾有事に本格介入することを躊躇わざるを得ない。だから“口先抑止”だけに留まる「戦略的曖昧さ」を続けるしかないのである。つまり「台湾有事は米国有事」だと確定しているわけではない。

他方、台湾は米国の全面的な参戦・支援なしに中国軍と戦うことは出来ないので、米国から明確な約束を取り付けることなしに自分の方から「独立」を言い出して、わざわざ中国の軍事侵攻を招くことはしない。

中国は、台湾が「独立」を宣言し、領土の重要な一部を失陥する事態に至った場合にのみ、米中の核を含む軍事的対決となるリスクを冒しても武力行使に出るのであり、従って台湾有事は起こらない。

しかし仮に台湾が無謀にも「独立」を宣言し、米国が大胆にも核戦争覚悟で介入した場合は、中国は日本はじめ極東のすべての米軍の出撃拠点に短・中距離ミサイルの雨を降らすので、自衛隊がノコノコ出て行く行かないに拘らず、自動的に「日本有事」になる。

米軍の尻に付いて出て行けば、もちろん対外侵略を禁じた憲法への違反である。だから「台湾有事は日本有事」は破滅の道であり、そうならないよう台湾有事そのものを絶対的に起こさせない外交努力だけが日本の採り得る方策となる。

自分の頭で考えずに「台湾有事は日本有事」という馬鹿話に浮かれていると地獄に堕ちることになるのである。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2025年8月4号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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