自民という“ゾンビ”に血を吸いつくされて死滅した維新。高市早苗から「抱きつく相手」に選ばれた“吉村洋文と愉快な仲間たち”の行く末

 

維新は頼り甲斐のある相手なのか

維新はすでに「既成政党」の1つで、以前のような、荒っぽいところもあるが何かやってくれそうな清新な新興勢力といったイメージは参政党などに奪われてしまった。

ではやや落ち着いた規制政党として全国にアピールする理念・政策をしっかりと持っているかというとそうでもなくて、今回の自民との連立協議でも明らかになったように、最初は年来の主張である「大阪副首都」構想を「絶対条件の1つ」としていたのに、途中から「衆議院の定数削減」を「絶対条件」だと言い出すような具合で、要するにこの党は一体何をやりたいのか、何をやりたくて自民と連立まで組むのか「何だかはっきりしないなあ」という印象を振り撒いてしまった。

そもそも、他党との政策協議をしようとするのに、事前に12項目もの自党の要求を並べ、そのうち1つか2つを「絶対条件」と突きつけるのは無礼な話で、絶対条件というからにはそれを丸呑みしないとそれ以上の協議に応じませんよという意味だろうから、入り口で踏み絵を迫るに等しい。

しかも、副首都にせよ定数削減にせよ、1つのテーマとして議論に値するとは思うけれども、今この時に圧倒的多数の有権者がどうしても打開してくれないと困ると切迫して求めていることでも何でもない。

早急にやってもらいたいのは、企業・団体献金禁止の法制化を含めた「政治とカネ」の問題のキッパリスッキリした決着であり、小手先の「これでちょっとお得でしょ」というメニューの競い合いを超えたもっと骨太の「こうしていけば子供らにも明るい未来を残せますよ」という中長期の経済発展展望の策定だろう。次の政権はその2つだけでもきっちりやってくれればそれでいいのであって、他のあれこれ細かいことはやってもやらなくてもいい。

連立協議はそういうもので、国民民主の玉木雄一郎代表がよく言うように「基本政策で一致しないと連立は組めない」というのは幼稚な誤謬である。基本政策が全て一致するなら1つの党になれば良い。基本政策が違っているから別の党なのであって、それでも、しかし、国民がいま切望しているいくつかのことを早急に実現するために「当面の具体的な政策の優先順位で一致」しさえすれば、そのために政権を組むのである。

維新はそういうことが分からずに、ただ自党の独自主張をカードとして突き出しているだけである。

「大阪副首都」というのがその代表格で、はっきり言って大阪以外の人にとっては無関係の、大阪人のローカルな要求に過ぎない。

本誌は以前の「大阪都構想」の時から一貫して批判しているが、東京一極集中の是正はそれでいいとしてその方策がなぜ大阪の「第2の都」化や「副首都」化でなければならないのか。京都の人は「なぜ京都でなくて大阪なのか」の説明を求め、それで納得すれば「大阪都」なり「副首都」なりを支持するだろうけれども、たぶん維新の会は、なぜ京都でも兵庫でも広島でも仙台でもなく大阪なのかの説明は用意していないだろう。これでは全国政党になることは出来ない。

そのことを含め維新のやり方は稚拙で深い思想的な裏付けを欠いていて、それ故に連立をやってみて気に入らなければサッサと離脱するということにもなりかねない。高市丸は明日出発をするだろうけれども、いつ離脱するかも知れない乗組員を抱えて船は最初から傾いていて、祝福する人もいない寂しい船出となるだろう。

維新は、補正予算ではともかく来年度予算案ではいくいつかの要求を掲げて実現を迫り、そうでなければ予算案に賛成しないといった強硬策に出ざるを得なくなるだろう。そうでないと維新は“魔女”が率いる自民に吸い尽くされ食い荒らされて死滅に向かうからである。

そうならないためには、公明党に倣ってまだ余力が残るうちにできるだけ早く連立を離脱するのが賢明で、そうだとすると高市丸の寿命は来春までということになりそうである。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2025年10月20号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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