全体収益の10%を詐欺や禁止商品の広告から得ていたとの推定も
CAの元社員による内部告発を発端として、メタからCAに8,700万人分もの個人情報が流出していたことが発覚し、CAはそのデータを使って米大統領選やブレクジットの投票行動を操作していたのではないかということが問題となり、ザッカーバーグ氏は米連邦議会の公聴会にも呼ばれました。
実際には、CAにデータが流れたのは、メタと共同研究をしていた英ケンブリッジ大学の研究者を介してとされていますし、事態を知ったメタは、個人情報の利用を禁じて削除を要請したようですが、一方で、フェイスブック上に氾濫していた投票操作のための虚偽広告や捏造された書き込みなどへの対応は不十分なままでした。
CAの事件について興味のある方は、以下のネットフリックスのドキュメント映画が参考になると思います。
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また、その後、バイデン政権下でのコンテンツモデレーション(情報検閲)が問題になったこともあります。バイデン元大統領の息子ハンター・バイデン氏に関する情報や、コロナ禍でのワクチンに関する情報などに関して、バイデン政権からの圧力で検閲を行っていたことを、2024年8月、ザッカーバーグ氏が自ら告白し、今後はファイスブックやインスタグラムでの検閲を廃止すると宣言しています。
今回、ロイターが報じた詐欺広告収入については、日本でも著名人を語ったニセ広告が氾濫して問題になりました。著名人数名が立ち上がって自民党に対処を申し入れたことなどが報道でも流れましたが、その時にも、メタの対応は緩慢で批判を浴びていました。
しかし、今回のロイターの報道で、メタが収益を優先して詐欺広告対応へのサボタージュを確信犯として行っていたことが明らかになりました。推定では、全体収益の10%(約160億ドル、約2.4兆円)程度を、詐欺や禁止商品の広告から得ているのではないかとされています。
ロイターの報道では、メタが米証券取引委員会(SEC)の調査を受けていることも示されており、また、英国の規制当局によると、2023年の報告で、メタの広告が、その年の決済関連詐欺被害全体の54%に絡んでいたとも指摘されており、これは、他のすべてのSNSプラットフォームを合計した数字の2倍以上に相当するとのことです。
メタは、AI投資にも積極的で巨額の投資を続けていますが、詐欺広告で得た資金もAI投資につぎ込んでいるのだとすれば、そもそも、そうまでして開発した同社のAIにどんな意味があるのかと考え込んでしまいます…。
(本記事は『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中 』2025年11月14日号の一部抜粋です。「ニューヨーク市長に選ばれたゾーラン・マムダニ氏とは」と題した「今週のメインコラム」、「Lenovo ThinkPad T14 Gen 6 IALプレミアム」を紹介する「今週のオススメ!」、高市政権に対する読者からの意見に対する辻野さん自身の考えを綴った「読者の質問に答えます!」、「亜鉛」の効用を取り上げた「スタッフ“イギー”のつぶやき」を含む全文をお読みになりたい方は、この機会にぜひご登録ください)
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