「高市本人」よりも恐ろしい自民党の巧みなネット戦略
男性の論者だからという訳ではないが、文芸評論家の藤田直哉は2月19日付『朝日新聞』夕刊のコラムで、高市自身というよりも、「自民党のネット戦略の巧みさ」が高市の「キャラクターを演出し、『推し』の対象とした」側面に注目している。
その背景には「深層で起こっているメディアの覇権の変化」がある。「新聞・出版・映画・テレビなど、多数の受信者に向けて一方的に発信し、時間や空間を共有するマスメディアから、SNSなど双方向に送受信でき、個人性の高いメディアへと情報経路の中心が変わった。好きなものを見られるので、各人の帰属意識は分散し、社会は分極化する。
新たなメディアの双方向性は、権威からの一方的な発信への抵抗感を生み、『マスコミは信じられない』『ネットに真実がある』という考えを発展させ、偽情報や陰謀論が蔓延し……不寛容を生み、対話や議論を困難にさせる。『推し活』選挙はその表れである」と。藤田はそこに「ポピュリズムからファシズム的な方向へ向かう危険への懸念」を見出している。
高市のキャラクターそれ自体の特異性ではなく、「自民党のネット戦略の巧みさ」がそれを「演出」しているのだとすると、その対象は必ずしも高市でなくてもいい訳で、高市がコケたら今度は小泉進次郎とか別の誰かを立てて「演出」していけばいいことになる。だとすると、恐ろしいのは高市本人よりも自民党ということになる。
そこまでの藤田の言説を読んで、ふと思い出したのは、今から40年以上も前にNHK出版から上下2巻で翻訳が出たバートラム・グロス=ニューヨーク市立大学教授の『笑顔のファシズム』だった。その本が出た直後にたまたま米国を訪れた私は、NY郊外の同教授の自宅にまで押しかけて長い時間、話を聞いた。
「先生のご著書の原題はFriendly Fascismです。現代のファシズムは、軍靴の音を鳴り響かせて行進して来て人々を威嚇し強制するのではなく、忍び寄るようにいつの間にか近づいて来るのですね」
「そうだ。NHKは日本語版のタイトルにSmilingという語を使ったそうだが、まさにその通りだ。軍産複合体は人々が気付かぬうちにいつの間にかこの社会を覆い、身動きができないようにしてしまう。すでに米国はそのような方向に追い込まれ始めている」
「忍び足(Stealthily)なんですね」……
当時はまだインターネットもSNSもなく、「新聞・出版・映画・テレビなどのマスメディア」の“右傾化”が問題にされていた時代だった。ところが今では、藤田の言うように「情報経路の中心」は移動し、人々は自分らが操られているという自覚もないまま同じ方向に群れをなして走り出そうとしているかのようである。
さて野党はこの状況への対応に余りに大きく遅れをとっていて、勝負が成り立ちそうにない。どうしたものだろうか。
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