「今週のXから」では、2週連続でジャック・ドーシー氏の大量リストラの件を取り上げましたが、敗戦後のどん底の中、いつ倒産してもおかしくない状況下にあって、漁業をしたりラジオの修理をしたりしながら何とか食いつなぎ、1人の首も切らないということがどういうことなのかについては、まさに想像を絶する話です。
「大家族主義」といわれる独自の経営哲学を持ち、戦後日本が欧米型資本主義や合理主義を礼賛する傾向に警鐘を鳴らし、日本政府や欧米の石油メジャーからの理不尽な圧力にもひるまずに正面から対峙した人です。
「黄金の奴隷になるな」と自らを戒めて、「互譲互助」など、日本独特の思想、文化、精神性を大切にしました。逸話には事欠きませんが、最も有名なのはイランにまつわる「日章丸事件」でしょう。今回はこの話を振り返っておきたいと思います。
欧米諸国の利権争いに翻弄されたイランは、戦後独立こそしていたものの、当時世界最大とされていた同国の石油資源は、英国石油メジャーのアングロ・イラニアン石油会社(後のBP)の管理下にありました。そのため、イラン国庫にも国民にも、石油の恩恵が回らない状況にありましたが、同国は1951年に石油産業の国有化を宣言して、西側諸国の追い出しに掛かりました。
これに猛反発した英国は、中東に海軍を派遣して、イランに石油を買い付けに来た外国籍タンカーはすべて撃沈すると、国際社会に向けて警告を発しました。経済制裁や禁輸措置を強行する英国に、イラン政府は態度を硬化させ、「アーバーダーン危機」と呼ばれる一触即発の状況になっていました。
一方、戦後、連合国による占領を受けた日本は、占領終結後も米英の強い影響下にあって、独自ルートで石油を自由に輸入することが禁じられており、それが戦後の経済復興の足枷になっていました。
イラン国民の困窮と日本の早期経済復興を憂慮した出光佐三氏は、英国のイランに対する経済制裁に国際法上の正当性は無いと判断し、原油買い付けのために自社のタンカー日章丸2世号をイランに派遣することをついに決意します。
ここまで書くだけでも、出光佐三氏の度胸と気骨に大いに興奮するのですが、長くなりましたので、この続きはまた次回にしたいと思います。
(本記事は『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中 』2026年3月13日号の一部抜粋です。次号以降の続きのほか、今号は「ジャック・ドーシー氏のAIリストラ宣言についての補足」と題した「今週のXから」や「読者の質問に答えます!」、「スタッフ“イギー”のつぶやき」など、レギュラーコーナーも充実。この機会にぜひご登録をご検討ください)
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