クラシック音楽の世界に、今もなお熱狂的なファンを持つ伝説の指揮者がいます。ヒトラーへの敬礼すら拒んだ反骨精神、1枚30万円近いCDが存在する伝説的名演奏、そして楽譜への圧倒的な深い洞察力……。今回のメルマガ『歴史時代作家 早見俊の無料メルマガ』では、著者の早見俊さんが、20世紀最高の指揮者と称えられるフルトヴェングラーの知られざるエピソードを紹介しています。
20世紀最高の指揮者フルトヴェングラー。ヒトラー敬礼を拒んだ反骨精神
しばしば20世紀最高の指揮者と讃えられるベルリンフィル第3代常任指揮者ヴィルヘルム・フルトヴェングラー。
彼は反骨精神の持ち主で、ヒトラーの前で演奏する際、ヒトラー敬礼をするのを嫌がり、舞台袖から指揮棒を持ったまま指揮台に向かいました。
数々の名演奏が残されていますが、ステレオ時代以前のモノラルばかりです。それでも、今尚世界中のクラシック音楽ファンの熱烈な支持を得ていますね。何年か前、ベートーベンの第9を録音した音源が光学ディスク化(よくわからない)されていて値段を見てびっくり、何と30万円近くしました。
伝説の録音と30万円のCD
さぞや音質がいいのでしょうが、それにふさわしい再生装置と聴く環境がなければ宝の持ち腐れですし、第一、1枚30万円のCDにはとても手が出ませんでした。いつの録音だったかは忘れました。
ただ、有名な1951年のバイロイト復活音楽祭での演奏ではなかったと記憶しています。バイロイト復活音楽祭での演奏はいくつか版があり、モノラルを電気工学的にステレオ化したもの、フルトヴェングラーが指揮台に立つまでの足音が入っているもの、このため「足音入り」と称される、など、まさしく歴史的名演奏と評価されていますね。
20世紀が終わる時、音楽雑誌が20世紀で残されたクラシックの名盤ベスト10の投票を募集した際、断トツの1位でした。ちなみに2位はショルティ版、「ニーベルングの指輪」だったと記憶しています。
フルトヴェングラーがいかに凄い指揮者であったかを物語るエピソードの一つです。
ミトロプーロスとの衝撃の逸話
メトロポリタン歌劇場の常任指揮者を務めたディミトリオス・ミトロプーロスがある日、第9の第1楽章について解釈上疑問に思っていることをフルトヴェングラーに問いました。フルトヴェングラーは一音符ごとに理路整然、しかも懇切丁寧に説明してくれ、ミトロプーロスは感激のあまり、自分一人が聞いただけでは勿体ないと、「あなたは今おっしゃったことを本にすべきです」と進言します。するとフルトヴェングラーはキョトンとして、「私が話したことは全てベートーベンの楽譜に書いてありますよ」と答えたそうです。
楽譜を読み込む深さ、フルトヴェングラーの優れた音楽性と深みを物語るエピソードですね。
image by: Erich Salomon, Public domain, via Wikimedia Commons









