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経済的にはプラスになる「ディール」を欲している米中

とりあえずカードの総数は10枚、つまり5つのB、3つのT、そしてイランにAIあるわけですが、このうち、半導体とAIはセット、通商委員会と関税、大豆、牛肉、ボーイングはセット、になると思います。そうすると、論点は「AI」「通商」「投資」「台湾」「イラン」「合成麻薬」の6つということに集約できます。

まず「台湾」と「イラン」ですが、どちらも国内における政治的求心力に直結します。アメリカが台湾で譲歩すれば習近平には加点されます。中国がアメリカの求めに応じてイランに圧力をかければトランプに加点ということになります。そうではあるのですが、どちらも複雑な問題であり、両国ともに譲歩の難しい問題でもあります。

一方で通商に関しては、他の課題とのバランスを取って「ディールの材料札」になる可能性もあるし、通商課題の中で「お互いが得をするようにバランスする」という選択も成立するでしょう。合成麻薬の問題は、中国としては有機麻薬を禁止しているので、医療用に生産しているだけですから、怒られれば硬化するでしょうが、懇願されれば取り締まるかもしれません。

そんな中で、同行する経済人の顔ぶれも「ディール」と関係するに違いありません。例えばですが、ボーイングのCEOを連れて行って、それでも中国が「買わない」ということですと、相互にメンツが潰れます。またアップルのクック氏を連れて行って、それでも高関税ということにはならないでしょう。NVIDIAのファン氏が行くなら、AI用のGPUであるH200の販売にGOサインとなる可能性が高いということになると思います。

では、会談の全体としてはどういうシナリオになると考えられるでしょうか?

直前になって、外交専門誌の『フォーリン・アフェアーズ』にカート・キャンベル元国務副長官が寄稿していましたが、キャンベル氏は「交渉は政治的見世物」なので、注目されればその分だけ合意は遠のく、というような見立てをしています。

これは少し違うように思います。キャンベル氏と言えば、人脈としてはヒラリーなど民主党に連なる人物ですから、政治的にはそういった見立てをしたがるのは分かります。ですが、冷静に考えれば、両国ともに経済の現状、そして先行きについては深く悩んでいます。ですから、ウィン=ウィンの関係になるような合意には進む可能性は排除できません。と言いますか、トランプは中間選挙を、そして習近平は28年人事を重たい課題として背負っています。

どう考えても、経済的にはプラスになる「ディール」を双方は欲しているのです。この点は、かなり強力な動機としてあると考えられます。従いまして、現実的には、次のような<シナリオA>になる可能性が一番高いと考えます。

<シナリオA>

イラン、台湾は厳格に現状維持。つまり、アメリカは台湾統一を許す素振りは一切しない。中国はイランの問題に介入しない。

その一方で経済について双方にメリットのある話は具体的に進む。関税は最低限に近い水準に戻す。ボーイング機、牛肉、大豆を中国は買う。アップル製品は引き続き主として中国が製造する。

投資に関しては、現状よりやや規制緩和に進む。

但し、AIについては、米側は警戒心を解かない。半導体は売るが、巨大テック系が中国のAIと連携したり、問題の「ミトス」を中国に売ったりということは起きない。

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