可能性が無いわけではない「何も合意できない」カオス状態
<シナリオB>
反対に、お互いに警戒心と対立の過去を解除できない中で、交渉はカオス状態となり、何も合意できない、という可能性も全く無いわけではありません。依然として両国は強いライバル関係にあり、お互いに妥協しないことが政治的求心力になるという流れは残っているからです。キャンベル氏の見立てはこちらになります。
<シナリオC>
その全く正反対に、米中が限りなく妥協してしまうという可能性です。お互いが、自国の経済浮揚に必死の思いがあり、そのためなら毒だろうが何だろうが飲むという覚悟になると、次のようなシナリオで進む可能性もゼロではありません。
「中国はイランへの説得には着手しないが、その代わりに米国から最優先で原油の供給を受ける」
「米国は中国が台湾との統一を平和裏に進めるのなら、これを妨害しないというような、過去にはあり得なかったような文言を許容する」
「通商は全て再開、そうして両国ともに国内経済の浮揚を図る」
「AIについては、禁輸を解除。相互投資も許可。相互利用も許可。米中のAI大国が連携して世界を牛耳る」
さすがに<C>になる可能性は少ないと思いますが、AIだけについて言えば、何が起こるか、かなりの不透明感を感じます。大きなLLM(大規模言語モデル)ということでは、米国が猛烈な投資をしていますのでアドバンテージがあるようです。ですが、一部のアルゴリズムでは、中国のベンチャーも健闘している中では、ケンカするとか、お互いを禁止して排除するよりも、提携するメリットは確かにあります。
ですが、仮に民生分野だけであっても、米中が全面提携してしまうというのは、例えば日本などの立場は非常に弱くなるわけで、経済面でも安全保障の面でも危機感をもって監視する必要を感じます。
ブラックストーンなど、投資銀行が絡んでくるのはこうした事情もあると思います。そして、こうしたストーリーの奥には、この夏と言われている「スペースX上場」という問題が控えています。「ミトス」で話題のアンソロピックの上場も、またChatGPTの「オープンAI」の上場という問題もあります。
こうしたAI各社の上場による資金調達、そしてGAFAM各社のAI戦略なども、全て将来投資という段階は過ぎており、マネタイズによる「AI売上」をしっかり上げていかないと市場に蹴られる時代でもあります。そんな中で、米中がお互いをどう仕切っていくのか、今回の会談でも大きなテーマになると思われます。
ところで、日本時間の11日(月)にアメリカのベッセント財務長官が来日して、片山財務相との夕食会があった模様です。その後のドル円相場はジリジリと円が下げており、本稿の時点では157円を超えつつあります。ベッセント氏は、明けた12日の火曜日には高市総理とも会談するようですので、そこで最終的な方向性が出てくるのではと思われます。
ベッセント氏が、これ以上の円安を許さないとして、なおかつ米中会談で日本に不利になるような合意はしないという内示をするのがベストですが、さすがにそうはならないでしょう。一方で、本気で日本経済と円を立て直すために、昭和の昔のように「改革要求の外圧」をかけてくれる可能性も薄いと思います。
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