世界の安全保障の継続性を左右しかねない中国の動き
現在、世界最大級の懸念の一つがホルムズ海峡です。ホルムズ海峡は、世界のエネルギー動脈であり、ここが不安定化すると、単に原油価格が上がるだけではなく、すでに私たちが見ているように、世界経済そのものの“心理”が壊れます。
実際、現在すでに、海上船舶に対する保険料の上昇、迂回路を通るがゆえに生じる輸送コストの高騰と輸送の大幅な遅延、それに伴う石油精製品を中心とするグローバル・サプライチェーンの混乱が起きています。
私は長年、エネルギー交渉やエネルギー・食糧安全保障問題にも関わってきましたが、ここで多くの人が誤解していることがあります。
それは、【封鎖が解除されれば、状況はすぐに元通りになる】という考えです。
しかし、現実は違います。一度でも“危険海域”という認識が広がると、物流企業はリスクを価格に織り込み続けます。つまり、世界経済のシステムが“平時コスト(Business as Usual)”に戻ることはありません。
現在の国際紛争は、軍事衝突による犠牲の拡大だけでなく、世界経済システムの“信頼コスト”を増大させており、このコストは、最終的に私たちの生活へ跳ね返ってきます。
この危機をさらに深刻なものにしているのが、いつまでも終わらないロシア・ウクライナ戦争の存在です。
ロシア・ウクライナ戦争の本質は、すでに古典的戦争ではなく、相手社会を疲弊させることへ移行しています。言い換えると終わりの見えない凄惨な消耗戦です。
ロシアは、ウクライナのエネルギー施設や重要な生活インフラを継続的に攻撃しています。これは単なる軍事作戦ではなく、【国家機能そのものを弱らせる戦略】です。そして、【国民の厭戦機運を高め、内側からウクライナを崩壊させようとする企て】です。
一方、ウクライナ側も、ドローンや長距離攻撃能力を強化して、ロシアのインフラを破壊し、首都モスクワ周辺を攻撃できることを示すと同時に、自前の兵器を用いて、ロシアに一方的に奪われた領土を奪還しています。
追い込まれている感が強まったため、ロシアは新型の中距離弾道ミサイル“オレシュニク(オレシニク)”を投入して、首都キーウのほか、ウクライナの主要都市を攻撃していますが、これはロシアの優位性を示すのではなく、ロシアが追い込まれていることを示す証ではないかと考えられます。
ロシア・ウクライナ戦争の様相が再び激しさを増す中、ここで皆さんにぜひ理解していただきたいことがあります。
それは、現代戦争は、“前線”だけでは決まらないということです。電力、情報、通信、金融システム、そして国民心理への影響など、これらすべてが“戦場”です。
だからこそ、“停戦”が難しいのです。なぜなら、“戦線”だけ止めても、“敵国への圧力”は継続できてしまうからです。
つまり、ロシア・ウクライナ戦争も、ガザ情勢やレバノン情勢も、そしてイラン情勢を見ても、仮に停戦ラインを引くことができても、戦争が終わらない時代に入っているのです。
そして、今後の世界の安全保障の継続性を左右しかねないのが、台湾海峡を含むアジア太平洋地域における中国の動きです。
皆さんご存じのように、中国は現在、南シナ海・台湾周辺で軍事活動を強化しており、そこにアメリカも絡んで緊張は確実に高まっています。
しかし私は、中国が直ちに台湾に全面侵攻する可能性は現時点では高くないと見ています。むしろ危険なのは、中国が選択する【グレーゾーン戦略】です。
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